研究課題/領域番号 |
25860418
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
佐藤 健吾 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (70549930)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / バイオマーカー / マクロファージ / ペプチド |
研究概要 |
In vitroでの作用および分子機構を明らかにする為、酸化LDLによる培養ヒト単球由来マクロファージの泡沫化(動脈硬化の初期病変に特徴的な所見)に対するTSG-6、ウロコルチン、カルディオトロフィン1(CT-1)、キスペプチン10 、スタニオカルシン類似ペプチドの制御作用、関連遺伝子発現制御について検討したところ、TSG-6及びウロコルチンはCD36、ACAT1発現抑制を介して泡沫化を抑制した。一方、CT-1及びキスペプチン10はCD36、ACAT1発現促進(MAPK/ERK、PI3K、AKT1/2シグナルが関与、CT-1のみ検討)を介して泡沫化を促進した。また、CT-1は培養大動脈平滑筋細胞の遊走、増殖、コラーゲンI産生を促進した。TSG-6及びウロコルチンは培養大動脈平滑筋細胞および大動脈内皮細胞の増殖を抑制し、ウロコルチンにおいては平滑筋細胞の遊走も抑制した。スタニオカルシン類似ペプチドは配列によりこれらに対し相反作用が認められる為、さらなる解析が必要である(未発表)。 In vivo、ex vivoでの作用および分子機構を検討する為、アポE欠損マウスに浸透圧ポンプを用い生理食塩水(コントロール)、CT-1及び抗CT-1抗体を4週間投与した。CT-1投与で大動脈硬化病変形成は促進した。また、大動脈弁輪部での病変面積、血管壁の単球/マクロファージの浸潤及び血管平滑筋細胞が増殖、コラーゲンIの含有が増加した。抗CT-1抗体単独投与ではそれらはキャンセルされ、単球/マクロファージの浸潤はコントロールと比較しても抑制された。浸出性腹腔マクロファージの解析では、ASC、NF-κB、COX-2のようなインフラマソームの活性化が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スタニオカルシン類似ペプチドについては、全長、分画などの配列により異なる作用を持つことを見出した。今後活性部位の特定が必要である。それに伴い、測定系の開発に変更が必要と思われる。その他の物質においては、in vitro実験は予定通り進み、CT-1においては既にアポE欠損マウスへの持続投与によるin vivo、ex vivo実験まで行っており、計画以上に進行している。よって、全体的としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
①In vitro実験:培養ヒト大動脈内皮細胞での単球の遊走・接着因子の発現、単球-内皮接着能に対するTSG-6、ウロコルチン、CT-1、キスペプチン10 、スタニオカルシン類似ペプチドの作用を解明する。 ②In vivo実験:アポE 欠損マウスに浸透圧ポンプを用いて各ペプチドを4週間投与し、大動脈の動脈硬化病変の解析を行う。具体的には、採取した大動脈を長軸に切開し、オイルレッドO染色にて脂質沈着を伴う硬化病変面積を測定する。また、大動脈弁輪部での横断凍結切片における同染色による動脈硬化病変の解析に加え、免疫染色にてマクロファージの病変部への浸潤・集積および血管平滑筋細胞増殖の解析を行う。さらに、大動脈内皮に接着した単球を詳細に観察する。 ③Ex vivo実験:投与した全マウスの体重および収縮期血圧は投与前後で測定する。投与終了時の採血では、血漿中のペプチド、総コレステロール、中性脂肪、血糖値を測定する。大動脈の内皮細胞における単球遊走・接着因子の発現を検討し、浸出性腹腔マクロファージを用いて泡沫化や関連遺伝子の発現、インフラマソームの変化を解析する。 ④臨床研究:ヒトにおける病態生理学的意義およびバイオマーカーとしての有用性を検討する為、RIAまたはELISAによる定量測定系開発を引き続き行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも、ApoE欠損マウス、高脂肪食、浸透圧ポンプを多く購入する必要が出たため。 ApoE欠損マウス15匹、浸透圧ポンプ30個、高脂肪食10kgを購入し、投与量による血中濃度の検討を行う予定である。
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