研究課題
我慢できず、既存治療が無効な『難治性かゆみ』は、痛みと同様に患者のQOL を低下させる深刻な問題である。かゆみは1 次求心性神経から脊髄に伝達され、最終的に脳で認知される。末梢から中枢に至るかゆみの神経伝達異常は、その難治化の一因であると推測される。しかし、これまで脊髄におけるかゆみ伝達様式の詳細は分かっていない。本研究では、難治性かゆみの治療法の開発を目指し、in vivo 細胞外記録法と薬理学・行動学的手法を駆使して、脊髄におけるかゆみの神経伝達物質受容体システムを解明することを目的とした。本年度は、前年度までの成果を受けて、慢性掻痒モデルマウスに対する同定された神経伝達物質受容体ブロッカーの止痒効果の検討を行った。慢性掻痒モデルマウスには、コナヒョウヒダニ虫体成分含有軟膏の反復塗布により作製したアトピー性皮膚炎モデルNC/Ngaマウスを用いた。アトピー性皮膚炎様症状を発症したNC/Ngaマウスに、substance P(SP)受容体であるNK1Rアンタゴニスト(L733060)、グルタミン酸受容体の1つであるAMPARアンタゴニスト(CNQX)、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)アンタゴニスト(RC3095)の単剤、あるいはコンビネーションで脊髄投与を行い、投与前後の掻破行動に対する各アンタゴニストの影響について検討中である。将来的にアトピー性皮膚炎の難治性かゆみの治療法に向けて、薬剤投与群の例数を増やし、統計学的解析を進めている。
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