がんによる神経障害性疼痛の病態生理の解析と治療薬の探索: 腹膜播種モデルを用いて

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 25860432
• 研究機関: 国立研究開発法人国立がん研究センター
• 研究代表者: 鈴木 雅美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所 がんゲノミクス研究分野, 研究員 (80434182)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: がんの痛み / 神経障害

研究実績の概要

シュワン細胞は脱分化に伴い、GFAP を発現することが知られている。癌細胞とシュワン細胞の相互作用を解析する目的で、GFAPの発現増加に連動して化学発光する GFAP-Luc マウスを用いて、シュワン細胞の初代細胞を作製し、癌細胞培養上清によるシュワン細胞の脱分化の有無を解析した。その結果、培養上清添加による化学発光の有意な増大が認められた。さらに、シュワン細胞に癌細胞自体を添加し、共培養したところ、共培養系においても化学発光の顕著な増大が認められた。これらのことからシュワン細胞は、癌細胞から分泌される液性因子のみならず、癌細胞とシュワン細胞の接触においても GFAP の発現を増加させることが明らかとなり、癌細胞がシュワン細胞の脱分化を引き起こしている可能性が示唆された。そこで神経ネットワークを可視化することができる sox10 venus マウスに、膵臓癌細胞を腹腔内移植し、シュワン細胞の脱分化を阻害する JNK の阻害薬を投与し、痛みの閾値と神経変性に対する影響を観察した。その結果、移植後3週目に認められるうずくまり行動(痛み閾値)には抑制がみられたが、癌細胞による神経の形態変化には大きな影響は認められず、JNK 阻害薬単独ではがんによる神経変性を防ぐことが難しいことが示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Genomic Sequencing Identifies ELF3 as a Driver of Ampullary Carcinoma. (2016)
  • 著者名/発表者名: Yachida S, Wood LD, Suzuki M, et al.Takai E, Totoki Y, Kato M, Luchini C, Arai Y, Nakamura H, Hama N, Elzawahry A, Hosoda F, Shirota T, Morimoto N, Hori K, Funazaki J, Tanaka H, Morizane C, Okusaka T, Nara S, Shimada K, Hiraoka N, Taniguchi H, Higuchi R, Oshima M, Okano K, Hirono S, Mizuma M, Arihiro K, et al.
  • 雑誌名: Cancer Cell 巻: 29 ページ: 229-240
  • DOI: 10.1016/j.ccell.2015.12.012
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The atypical antipsychotic, olanzapine, potentiates ghrelin-induced receptor signaling: An in vitro study with cells expressing cloned human growth hormone secretagogue receptor. (2015)
  • 著者名/発表者名: Tagami K, Kashiwase Y, Yokoyama A, Nishimura H, Miyano K, Suzuki M, Shiraishi S, Matoba M, Ohe Y, Uezono Y
  • 雑誌名: Neuropeptides 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1016/j.npep.2015.12.010
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical utility of circulating tumor DNA for molecular assessment in pancreatic cancer. (2015)
  • 著者名/発表者名: Takai E, Totoki Y, Nakamura H, Morizane C, Nara S, Hama N, Suzuki M, Furukawa E, Kato M, Hayashi H, Kohno T, Ueno H, Shimada K, Okusaka T, Nakagama H, Shibata T, Yachida S
  • 雑誌名: Sci. Rep. 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1038/srep18425
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinicopathologic Features and Germline Sequence Variants in Young Patients (≤40 Years Old) With Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. (2015)
  • 著者名/発表者名: Ohmoto A, Yachida S, Kubo E, Takai E, Suzuki M, Shimada K, Okusaka T, Morizane C
  • 雑誌名: Pancreas 巻: - ページ: -
  • 査読あり
• [学会発表] The effectiveness of lidocaine for opioid-resistant and peritoneal carcimatosis-associated abdominal pain (2015)
  • 著者名/発表者名: Tagami K, Miura T, Suzuki M, Matoba M
  • 学会等名: ESMO Asia 2015
  • 発表場所: シンガポール
  • 年月日: 2015-12-18 – 2015-12-21
  • 国際学会