研究課題
若手研究(B)
本研究は国内最大規模の出生前向きコホートを用いて母体血・臍帯血の生体試料と妊娠期の環境の両面からPCB、OH-PCBの曝露評価を行い、代謝に関与するSNPsと体内PCB・OH-PCB濃度との関連を検討し、妊娠期のPCB代謝経路を明らかにする糸口を提供し、これまでPCBがヒトの健康に与えるとされてきた影響が、実際はOH-PCBの影響である可能性についての解明を行うこと、OH-PCBが母児の甲状腺ホルモン値攪乱および生後の児の神経発達へ与える影響の解明を行い、OH-PCBの胎児期曝露がおよぼす次世代への健康影響評価によって効果的な環境リスク対策と予防対策への道を切り拓くことを目的とする。前向きコホート研究「環境と子どもの健康-北海道スタディ」を用いて、2002年~2005年までに北海道内の産科施設で妊婦健診、出産を行った母児514組を対象に、すでに採取・保管済みである凍結血液を用いて、一部母体血液よりLC/MS/MSを用いた一斉分析法による妊娠中PCB,OH-PCBの濃度測定を行った。札幌市が母児に実施しているマススクリーニングの結果である妊娠初期の母甲状腺ホルモン値および児の出生時甲状腺ホルモン値(TSH,FT4)と母体血中OH-PCBのデータが揃う母児256組で、妊娠期OH-PCB曝露がおよぼす母児甲状腺ホルモン値への影響を検討した結果、男児において胎児期OH-PCB曝露濃度が高いと出生時のFT4値が上昇することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
OH-PCB測定が当初の計画より順調に進み、早期に甲状腺ホルモン値へ与える影響について検討することができた。そのため、H25年度中に国際学会にて「OH-PCBの胎児期曝露がおよぼす母児甲状腺ホルモン値への影響」について発表を行った。一方代謝関連遺伝子多型の解析は使用装置の解析条件検討を行っている段階であり、当初の計画よりも若干の遅れがみられるが、H26年度の早期に開始できる予定である。
当初の計画に沿って研究を推進し、平成25年度までの研究内容をふまえて、引き続き妊娠期のOH-PCB曝露量を検討するため、母体血中PCB,OH-PCB濃度の測定を行っていく。また、H25年度中に解析を行わなかったSNPsについては、H26年度から解析を行い、OH-PCB曝露量との関連を検討していく。その上で、学会での発表を行い、英文論文を作成していく予定である。
PCB、OH-PCB濃度測定については、測定用実験試薬の在庫で対応できた。H25年度中に開始予定だった代謝関連遺伝子SNPsの解析は、使用装置の解析条件検討の後に開始予定であるため、H25年度は解析を行わず、実験試薬の購入もなかった。H26年度に代謝関連遺伝子SNPsの解析を開始するため、H25年度繰り越し分を同解析用実験試薬購入費に充てる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)
Environmental Health and Preventive Medicine
巻: 18 ページ: 429-450
10.1007/s12199-013-0357-3
http://www.cehs.hokudai.ac.jp/research/yearly/
http://www.cehs.hokudai.ac.jp/hiroba/