研究実績の概要 |
本研究の目的である、集団における疾患の有病率、サンプルサイズ、血縁構造化の程度の大きさ、遺伝率の違いにより、表現型とリスク環境因子の関係性において、交絡因子としての血縁構造化の影響がどの程度あるか調べるために、先天性股関節脱臼(後期診断)(資料はWynne-Davies, 1970, In:Emery AEH(ed) Moderntrends in human genetics, Vol1., p316-338による)の先行研究データを利用し検証した。一般集団と血縁集団の比率を4:6, 2:8, 6:4で構成した血縁混合集団をサンプルサイズ100, 500, 1000, 5000で生成した。一般集団と血縁集団(1親等、2親等、3親等)それぞれについて表現型分布を正規分布で定義した。先天性股関節脱臼(Wynne-Davies, 1970)のデータから、1親等、2親等、3親等の表現型分布、遺伝力をそれぞれ算出し、まず、一般集団と血縁集団が混在する混合集団をつくり、もとの一般集団の表現型分布と混合集団の表現型分布の間でどの程度、分布に違いが生じるか、t検定を行った。その結果、もとの一般集団と血縁混合集団の表現型分布に有意な差はなかった(有意水準5%)。一般的に環境因子と遺伝子因子すべての効果は易罹病性として一つの変量に集約することができ、血縁構造を含む混合分布と一般集団の両者の表現型分布に差があれば、環境因子・遺伝因子の影響の大きさが違うことによるものと考えることもできるが、今回のアプローチでは、両者の分布自体に差異がみられなかったため、血縁構造の有無と環境因子・遺伝子因子の影響の大きさの間に関係性はない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にあげた4つのパラメータ(集団における疾患の有病率、サンプルサイズ、血縁構造化の程度の大きさ、遺伝率)について先行研究の先天性股関節脱臼(後期診断)(資料はWynne-Davies, 1970, In:Emery AEH(ed) Moderntrends in human genetics, Vol1., p316-338による)のデータを利用して検証を進めることができているため。
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