研究課題
若手研究(B)
平成25年度は、平成20年度に徳島県の職域コホートに参加した方の保存血清を用いて血清中の脂肪細胞特異的脂肪酸結合蛋白質(FABP4/A-FABP)濃度を測定した(中央値:男性10.1ng/ml、女性10.5ng/ml)。痩せた女性が多く参加しているため、女性の濃度が比較的低い値を示し、更に代謝異常や糖代謝異常の発症数が不十分であった。このため、平成20年度に疫学調査を受診した20~60歳の男性労働者を5年間追跡し、血清FABP4濃度と糖代謝異常およびメタボリックシンドローム発症との関連を検討した。(1) 糖代謝異常(空腹時血糖値110mg/dl以上又はHbA1c6.0%以上)の既往がなく、再度糖代謝異常の有無を判定できた394名を解析対象者とし、追跡期間中に35例の糖代謝異常の発症を認めた。血清FABP4濃度を3分位し、血清FABP4のレベル別に糖代謝異常の発症率を検討したところ、血清FABP4濃度の上昇とともに有意に増加した(p for trend<0.005)。更に、多変量調整後の糖代謝異常発症の相対危険も、血清FABP4濃度の上昇とともに上昇する傾向が認められた。(2)メタボリックシンドロームの既往がなく、再度メタボリックシンドロームの有無を判定できた366名を解析対象者とし、追跡期間中に55例のメタボリックシンドロームの発症を認めた。メタボリックシンドロームについても同様の解析を行ったところ、血清FABP4濃度の上昇とともにメタボリックシンドロームの発症率は有意に増加し(p for trend<0.001)、多変量調整後のメタボリックシンドロームの相対危険も有意に上昇した(p for trend<0.005)。以上のことから、血清FABP4濃度の上昇は、糖代謝異常およびメタボリックシンドローム発症リスクの上昇と有意に関連することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、平成20年度に徳島県の職域コホートに参加した方の保存血清を用いて脂肪細胞特異的脂肪酸結合蛋白質(FABP4/A-FABP)濃度を測定した。また、平成25年度の追跡調査を行い、代謝異常や糖代謝異常発症の情報収集を実施できている。更に、血清FABP4濃度と糖代謝異常および代謝異常発症との関連の解析も進んでいる。しかし、女性の代謝異常や糖代謝異常の発症者数が不十分であったため、男性のみでの解析となっており、引き続き追跡調査にて発症情報の収集が必要である。
平成26年度も追跡調査を実施し、代謝異常や糖代謝異常発症の情報収集を継続する。追跡期間の延長による代謝異常や糖代謝異常の発症者数を増やすことで、脂肪細胞特異的脂肪酸結合蛋白質(FABP4/A-FABP)と糖代謝異常および代謝異常発症との関係に関するより詳細な検討が可能になると思われる。また、平成26年度は追跡開始時の血中脂肪酸分画と糖代謝異常および代謝異常発症との関連も検討し、血中脂肪酸分画の影響を考慮した上で血清FABP4濃度と糖代謝異常および代謝異常発症との関連について解析を行う。
脂肪細胞特異的脂肪酸結合蛋白質(FABP4/A-FABP)測定キットの購入を最優先としたため、次年度使用額分では必要とする統計解析ソフトを購入することができなかった。このため、次年度使用額分と翌年度分として請求した助成金とを合わせて、統計解析ソフトを購入する目的で次年度使用額が生じた。(1)代謝異常や糖代謝異常発症の情報収集のため、引き続き徳島県の職域コホートの追跡調査を実施する。その一環として、平成26年度も追跡調査にて、臨床情報の聞き取り、血液検査、身体測定などを実施し、発症に関する情報を収集する。この調査における必要物品費として研究費を使用する。(2)追跡調査で得られたデータを基にして、データベースを整備し、脂肪細胞特異的脂肪酸結合蛋白質(FABP4/A-FABP)と糖代謝異常および代謝異常発症との関係を明らかにしていく。また、得られた研究成果は国内学会、国際学会で報告するとともに、英文誌への投稿を予定している。これらの統計解析に使用する備品・消耗品類、および学会参加費用、投稿費用として研究費を使用する。
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