研究課題
平成25年度までに、血清脂肪細胞特異的脂肪酸結合蛋白質(FABP4)濃度の上昇とともに糖代謝異常およびメタボリックシンドローム(MetS)発症の相対危険が上昇する可能性を認めた。そこで、本年度は平成20年度に疫学調査を受診した20~60歳の男性労働者を6年間追跡し、FABP4と関連の深い脂肪酸分画を考慮した上で血清FABP4濃度と糖代謝異常およびMetS発症との関連を検討した。まず、糖代謝異常(空腹時血糖値110 mg/dl以上又はHbA1c6.0%以上)との関連性では、血清FABP4濃度の上昇とともに糖代謝異常の発症率は有意に増加した(p for trend<0.005)。更に、多変量調整後の糖代謝異常発症の相対危険も、血清FABP4濃度の上昇とともに上昇する傾向が認められた。しかし、発症者数が少ないため、追跡期間を延長し更なる検討が必要であると考えられる。次に、MetSとの関連性では、血清FABP4濃度の上昇とともにMetS発症率は有意に増加し、多変量調整後のMetS発症の相対危険も有意に上昇した(p for trend<0.005)。更に、細胞内では脂肪酸とFABP4は関連が深いと考えられているも、血清FABP4濃度と血中脂肪酸分画との相関は弱く、血清FABP4は血中脂肪酸分画とは独立して、有意にMetS発症と関連していた(p for trend<0.01)。一方、血中脂肪酸分画の変化も血清FABP4とは独立して、有意にMetS発症と関連していたため(p for trend<0.05)、血清FABP4及び血中脂肪酸分画の変化はMetS発症に対して各々異なる経路で関与している可能性が示唆された。以上のことから、血清FABP4濃度の上昇は、MetS発症リスクの上昇と有意に関連することが示唆され、MetSの進展状況を予測する指標となる可能性が示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0118373
10.1371/journal.pone.0118373