慢性炎症は、がんや心血管疾患、糖尿病などとの関連が明らかになってきており、後の様々な生活習慣病発症に関わる病態であることから、若年成人の精神健康状態(ストレス)や食事による炎症への影響を明らかにする必要がある。本研究では、ストレスおよび食事が、若年成人の炎症状態に対しどのような相互作用を示すかどうかを疫学的アプローチにより解明することを目的としている。 本年度はまず徳島県の中高年集団についてhs-CRPを測定し、食事との関連を検討した。その結果、hs-CRPと食事からのカルシウム摂取量に負の関連が認められ、BMIを調整しても関連は有意であった。この関連には性別やBMI、他の栄養素摂取との交互作用は認められなかった。この結果は第75回日本公衆衛生学会学会総会で発表し、海外学術雑誌に論文を投稿中である。 また男子大学生より得られた検体より、唾液中のコルチゾール、アミラーゼ濃度、血清中の高感度CRP (hs-CRP)濃度および27種類のサイトカイン濃度のすべての測定を終了し、GHQ28や栄養素等摂取量とあわせた詳細な解析を行った。解析の結果、まずGHQ28サブスケールである社会的活動障害スコアはhs-CRP濃度および唾液コルチゾール濃度と正に関連していた。一方、血清サイトカイン濃度はGHQ28と有意な関連が認められなかった。GHQ28サブスケールと栄養素摂取量との関連も認められた。交互作用を検討すると、hs-CRP に対してGHQ28サブスケール不安と不眠スコアとn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)摂取量、また社会的活動障害スコアとビタミンC摂取量との交互作用が有意であり、ストレスが高い状態でのn-3 PUFAやビタミンCによる炎症抑制効果が示唆された。以上の結果に関しても現在報告をまとめている。
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