本研究の目的は、高齢者の実生活下において、体幹部および四肢の皮膚温の変動と生活習慣病との関連を明らかにすることである。 今年度は、平成25年度と平成26年度に、595人の対象者において48時間にわたって体幹部、手関節部、足関節部で測定した皮膚温度変動と睡眠および夜間頻尿との関連に関する分析を進め学会発表を行った。就寝前2時間の手関節部皮膚温は就寝前2時間が33.0±1.6℃、就寝後2時間が34.4±1.3℃であった。多変量混合線形モデルを用いた分析から、就寝前2時間と就寝後2時間の手関節皮膚温が高いと、入眠潜時が短縮する有意な関連を認めた。就寝後2時間の皮膚温が高いと睡眠効率とは有意に高い関連を示した。これらの関連は、年齢、性、現在の喫煙、飲酒、体格指数、世帯所得、教育歴、睡眠薬の服用、抗うつ薬の服用、糖尿病、就寝時刻と独立したものであった。日中(離床から入床)の手関節、足関節、腹部の平均皮膚温から算出した皮膚温DPG(末梢皮膚温-体幹皮膚温)は-3.14±1.67℃であった。皮膚温DPGが中央値より低いLow DPG群ではHigh DPG群に比べて夜間頻尿のオッズ比は有意に高かった)。この関連は年齢、性、BMI、喫煙、飲酒、高血圧、糖尿病、eGFR、主観的睡眠障害で調整したオッズ比でも有意であった。さらに皮膚温DPG1℃低下に伴う夜間頻尿の調整オッズ比も有意に高かった。 また、皮膚温と密接に関連する冬室温低下と睡眠時間の関連や、室内寒冷曝露と腹部肥満との関連を学会発表した。
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