本研究3年目の2015年度は、研究目的の労働態様の多様化に対応した作業強度の新しい一覧表の作成のフィールド調査のうち、未実施の事業場での調査を行った。フィールド調査として、1.コメディカルおよび介護関連職、2.自動化や機械化が進んだ製造業、3.卸売業、小売業を予定していたが、3.の調査協力が得られていた企業において組織の統合再編があり、指揮命令系統や人員配置、従業員の雇用形態が変更され調査実施が困難となった。新たな調査協力企業を開拓する猶予もなく、今回の研究では1、2についての調査のみ実施した。1は総合病院の看護師、看護助手、作業療法士、理学療法士、調理師、介護老人保健施設の看護師、作業療法士、ヘルパー、介護付き有料老人ホームのヘルパー、2は鉄鋼業及び自動車製造業の現場作業者の調査を実施した。 得られた心拍数から予測最大心拍予備能(%HRR: % heart rate reserve)を算出し、作業負荷の評価指標として労働衛生分野に用いられているエネルギー代謝率(RMR: relative metabolic rate)に換算して評価を行った。 1、2ともに、一時的にRMRが5.0を超える作業は僅かで、1日を通しての作業が重作業(RMR>5.0)となる作業はなかった。同じ作業であっても、個人差が大きく出る作業もあった。当初、本研究は現状に対応した新しい一覧表の作成を目的としたが、一覧表を作成する基礎データの収集には多大な時間がかかり作業は煩雑であること、現状に対応した一覧表も時間が経過すると古くなること等から、一覧表作成よりも心拍数計測方法及びその評価指標を確立することの方が、高齢労働者、女性労働者の作業負荷の管理や復職時の作業負荷の調整等、個人に合わせた労働理衛生管理に有用であると考えられ、%HRRを指標とした作業負荷の評価指標の確立が今後の研究における新たな目標となった。
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