研究課題/領域番号 |
25860462
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鹿嶋 小緒里 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 助教 (30581699)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大気汚染 / 黄砂 / 循環器系疾患 / 呼吸器系疾患 / 救急搬送 / 死亡 / 健康影響 / 環境保健 |
研究概要 |
本研究は黄砂による健康影響を東アジア地域における地理的差異を考慮し、評価を実施するものである。また、影響評価においては、1)直接的影響:砂塵の粒子自体の作用によるもの、2)効果修飾的(間接的)影響:交通に起因する大気汚染による健康影響を相加させるものについて実施する。 平成25年度は、データの入手及びプレ解析を実施した。日本のデータは黄砂濃度(ライダーによる測定)と大気汚染濃度を、国立環境研究所と各地方自治体より、死亡個票は厚生労働省より入手した。ソウルにおける黄砂、大気汚染濃度と死亡データは、ソウル大学の研究協力者より入手し、解析のためのデータセットを構築した。 次に、黄砂の直接的な健康への影響をみるため、ソウルと日本の3都市においてプレ解析を実施した。結果として、黄砂の濃度が上昇すると、全死因と脳血管疾患による死亡リスクの増加がソウル、松江と大阪の西日本地域で特に観測された。本研究成果は、第25回国際環境疫学会年次総会(スイス)において発表を行い、世界の大気汚染研究者と相互に、アジアの知見について議論した。 次に、黄砂の効果修飾的(間接的)影響の評価を岡山市における救急搬送発生(疾病罹患)との関連について評価を実施した。救急搬送データは、岡山大学の研究協力者が岡山市消防局より入手した。まず黄砂と疾病罹患の直接的関連を評価した。結果として、黄砂の濃度が上昇すると、全疾患、循環器系、および呼吸器系疾患で救急搬送発生件数が高くなることが観測された。次に、黄砂の濃度が高い日において、交通を起因とする大気汚染濃度である浮遊状粒子物質(SPM)による救急搬送発生への影響を相加させるかを評価した。結果として、黄砂濃度が高い日において交通に起因する大気汚染による健康影響(特に循環器系および呼吸器系疾患)を相加させる傾向が観測された。本研究は現在、国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は当初の計画書にある通り、対象都市の選択を行い、日本および韓国のデータについても予定していたすべてデータ(黄砂、大気汚染濃度、気温、死亡)を入手し、データセットの作成は完了した。 データ解析については、ソウル、松江、大阪、東京の4都市を対象として、黄砂の濃度上昇による健康への直接的影響のプレ解析を実施し、当初予定をしていた国際学会でも発表をすることができた。 さらに、岡山市の救急搬送データを用いて、黄砂の直接的影響を評価することができ、あわせて効果修飾的(間接的)な疾病罹患への影響も評価を実施することができた。 当初の予定では本年度は、日本の国内に限定し、次年度にソウルをいれた東アジア地域における地理的差異の評価を実施する予定であったが、データ入手の進捗状況を鑑み、本年度に黄砂の死亡への直接的影響評価においてソウルを含む都市においてプレ解析を実施することができた。現在、次年度予定であった本解析に3月より着手しており、論文発表の準備を進めている。 黄砂の効果修飾要因としての死亡への影響については、本年度実施した救急搬送データを用いた解析結果をベースとして実施する予定である。 一部、平成25年度に購入予定だった解析のためのソフトを平成26年度に持ち越している。これら解析ソフトに関しては、当該研究の成果をまとめるものに必要となるものであり、平成26年度に持ち越したことによる研究の遅延は発生していない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の予定通り、東アジア地域での地理的差異の解明のため、ソウル(韓国)と日本で黄砂の影響解析を実施する。データセットの作成は本年度に完了しおり、データ解析部分に着手する。 現在すでに、直接的な健康への影響評価は解析を着手しているが、効果修飾要因としての黄砂の死亡への影響評価においては、直接的影響の解析結果がまとまった後に、解析を着手する予定である。 研究成果の一部を、国際環境疫学学会(米国)で発表し研究協力者と解析結果に基づき、さらに議論を行い、最終成果をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に購入予定としていた当該研究の解析に利用するソフトとデータについて、新バージョンを利用すべく、一部購入を平成26年度前半へ持ち越した。 研究費は、当該研究で必要となるソフトウエア、データの購入と、研究打ち合わせによる国内旅費、国際学会発表のための海外渡航費をはじめ、成果報告を発表するための論文の英文校正代で利用する予定である。 さらに平成25年度より一部持ち越した解析ソフトと、データの購入を平成26年度前半に予定している。
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