用いたin vitro感染実験モデルでは、ウェルシュ菌食中毒株の芽胞形成時に宿主細胞傷害が観察された。腸管毒素遺伝子(cpe)欠損株では細胞傷害は認められなかった。従って芽胞形成時に認められる宿主細胞傷害は、CPE依存性であることが明らかとなった。 胆汁酸が芽胞形成・CPE産生を促進するメカニズムを解明するため、胆汁酸存在下・非存在下でウェルシュ菌のin vitro感染実験を行い、芽胞形成時の菌体DNAマイクロアレイを行った。菌体遺伝子の約1割が胆汁酸添加により有意な発現変化を示した。芽胞形成関連遺伝子では、胆汁酸添加で芽胞形成のマスターレギュレーターspo0Aの発現に有意差はなかった一方、その下流遺伝子群では有意な発現上昇を示した。またspo0A欠損株では胆汁酸添加時においても芽胞形成は誘導されなかった。以上の結果より胆汁酸はSpo0Aタンパク質の活性化に関与することが示唆された。spo0A下流遺伝子に先駆けて発現変化した遺伝子を胆汁酸応答遺伝子の候補とし変異株の作出を試みた。Targetron法では変異株は得られなかったため現在相同組換え法にて変異株の作出を行っており、結論は出ていない。 DMEM培地で確認された芽胞形成・CPE産生はRPMI培地添加により抑制された。RPMI培地成分である無機物A添加時でも同様に抑制された。RPMI培地から無機物Aを除去すると芽胞形成が回復した。従って無機物Aは新たな芽胞形成・CPE産生抑制因子であることが明らかとなった。好気培養または酸化剤H2O2投与時には菌の死滅に先行して芽胞形成の抑制が認められた。一方還元剤アスコルビン酸投与時、芽胞形成促進が認められた。従ってredox反応が芽胞形成の制御に関与することが示唆された。 以上の成果は国内外の学術集会で発表されると共に学術誌Microbial Pathgenesisへの掲載が確定した。現在新たな論文を準備中である。
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