研究課題/領域番号 |
25860468
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
中村 剛史 自治医科大学, 医学部, 助教 (20554554)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 地域医療 / 受診行動 / 地理情報システム(GIS) / 医療提供体制 / 診療情報分析 / 医療へのアクセス / 医療の効率化 / 地域分析 |
研究概要 |
地域医療情報と診療情報を蓄積した「地域医療データバンク」を用いて、医療の効率化を推進する方策を検討している。本研究ではその一環として、住民の受診行動の地域範囲の実態を明らかにすることを目的とした。中でも市町村単位で整備することが目標となっている外来診療(プライマリ・ケア)の実際の通院範囲と市町村範囲との比較を行った。 診療情報は県、市町村の協力を得て収集されたものが蓄積され、本研究ではその中から2010年茨城県の国民健康保険および後期高齢者医療制度の被保険者の5月請求分の診療情報を解析対象とした。 これまでのところ悪性新生物、糖尿病、精神疾患、虚血性心疾患、脳血管疾患の5疾病を主病名とする患者が実際に通院サービスを受けた医療機関までの道路情報に基づいた距離を、居住地役場住所地を起点として算出した。この算出には、医療機関住所地データと役場住所地データを診療情報に従って組み合わせ、それぞれの2点間の距離を道路ネットワークに基づいたシミュレーションにより算出した。このシミュレーションには、地理情報システムを利用した。 これまでの分析によって、市町村によって面積や形状に違いはあるものの、市町村範囲は概ね9.4km圏内であった。いっぽうこれら5疾患の外来通院距離の実態は、患者の50%をカバーするには7.3km圏、75%をカバーするには14.9km圏、90%をカバーするには26.7km圏であることがわかった。すなわち、市町村住民の通院する医療機関を90%カバーするには、市町村範囲より17.3km(2.8倍)広い地域範囲に及んでいた。市町村住民の外来診療を支える地域医療体制を検討するときに、市町村内の医療資源だけでなく、隣接市町村の医療資源をも含めることでより実態を反映することができると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域医療データバンクから医療機関住所地データ、役場住所地データ、診療情報データの抽出が終了した。地理情報システムを用いて、これらのデータを組み合わせ、道路ネットワークによる距離の算出も終了した。これらを悪性新生物、糖尿病、精神疾患、虚血性心疾患、脳血管疾患の総数および疾患ごとで集計し、それぞれの通院範囲の推定の主要なデータを入手することができた。予定されていた作業は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究最終年度のため、論文執筆および発表を行う。そのために必要な分析の追加および情報収集にあたる。論文に関しては草稿準備の段階になっている。発表に関しては、2014年5月の世界家庭医療学会アジア・太平洋地区大会(マレーシア)で採択され、予定されている。 また解析の経過で関連した救急医療に関する受診距離に関する論文は国際雑誌Open Access Emergency Medicine誌に掲載が決定された。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、入院および入院外診療、121の疾病(社会保険表章用疾病分類)のそれぞれについて受診距離範囲のシミュレーションを行う予定であったが、その過程には当初予測を超える情報量があり、現在の解析環境では分析できなかった。そのため糖尿病、悪性新生物、虚血性心疾患、精神疾患、脳血管疾患の外来診療に絞って解析を進めた。この計画変更に伴い、未使用額が生じた。 まずは現在分析が進んでいるデータを発表および論文にするために必要な経費として未使用額を充てることにしたい。解析の進捗および研究費の使用状況により、現在分析が進まなかった解析環境整備のために、未使用額を充てることにしたい。
|