研究課題
石綿曝露は悪性中皮腫や肺癌を引き起こす。石綿の発癌作用はよく知られているが、癌疾患の抑制に働く抗腫瘍免疫機能への石綿曝露影響は不明な部分が多い。抗腫瘍免疫において細胞傷害性T細胞(CTL)は特異的に腫瘍細胞を攻撃する。腫瘍細胞が効果的に排除されるためには、「CTLが分化すること」だけでなく、「分化後のCTL亜集団(Effector,TEM,TEMRA,TCM)が機能を持続させること」、「CTLの遊走(腫瘍部位への遊走とリンパ節への停留)が適切であること」が重要である。CTL亜集団は、ケモカイン受容体とCD45RAの発現動態により分類できる。そこで、本研究の目的は分化後CTLを4亜集団に分類・単離したのち、各CTL亜集団の機能維持と遊走活性に対する石綿曝露影響を調べることである。平成27年度は、ヒトCD8+T細胞株を用いて、1カ月の石綿曝露亜株を作成し、長期石綿曝露によるメモリーCTL亜集団の機能影響について調べた。CD8+T細胞株をCD45RA、及びCCR7に対する各種蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーを用いてCTL亜集団の分類を試みたところ、TCM及びTEM集団に分類できることがわかった。5 μg/mlの石綿添加培地中で1カ月間培養維持しヒトCD8+T細胞株、EBT-8の石綿曝露亜株を作成したところ、石綿曝露亜株のgranzyme B+、perforin+、及びIFN-gamma+細胞比率は、5μg/mlの石綿曝露影響を示さなかった。今後は、より高濃度の石綿曝露亜株の作成・解析が必要である。
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Biomed Research Intternational
巻: 2015 ページ: 1-9
10.1155/2015/238431