研究課題/領域番号 |
25860472
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
辻 真弓 産業医科大学, 医学部, 准教授 (40457601)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児 / アレルギー / 化学物質 / 分子疫学 / 社会医学 |
研究実績の概要 |
【目的】乳幼児期の化学物質の曝露がアレルギー発症のリスクになっている可能性があるため、我々は最も身近な化学物質である樹脂(プラスチック)曝露に焦点をあて、乳幼児期の小児アレルギーの発症・増悪に関与する因子を解明するための研究を行っている。昨年度は血液が比較的得られやすい成人の血液を用いて、人が曝露を受けやすい樹脂(プラスチック)を探索した。その結果、成人においてはホルムアルデヒド(FA)とトルエンジイソシアネート(TDI)特異的IgG抗体陽性率が高いことを明らかにした。今年度は、乳幼児を対象にFAとTDI特異的IgG抗体を測定し、成人の陽性率と比較することを目的に研究を行った。 【対象と方法】方法:対象者 乳幼児56名(男児30名、女児26名)。平均月齢 19.8ヶ月。ドットブロット法にて抗原特異的IgG抗体値を測定した。 【結果】 陽性率:FA特異的IgG抗体 0%、TDI特異的IgG抗体 21%であった。 【考察】成人を対象とした研究結果では、陽性率:FA特異的IgG抗体 30%、TDI特異的IgG 抗体25%であった。乳幼児のFA特異的IgG抗体の陽性率は0%であるため、FAは年齢と共に感作されていく可能性が示唆された。対してTDIは、乳幼児期から成人とほぼ同様の陽性率を示している。アレルギー疾患におけるIgGの役割はいまだ不明な点が多い。今後はTDI特異的IgE・IgG抗体の両方を測定し、抗体とアレルギー疾患の関係を明らかにする必要がある。 【結論】昨年度生体試料を確保しやすい成人でプレ実験を行ったため、効率的に次のステップである乳幼児を対象とする研究に移行することができた。乳幼児と成人のFA、TDI特異的IgG抗体の陽性率は異なっている。成人と乳幼児の曝露物質の相違・曝露時期にも十分留意しながら、今後さらに対象者数、対象とする化学物質を増加する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度の結果を活かして、実際に小児の血液を用いて抗体を測定した。抗体測定が行われたのは現段階で56名と平成26年度の目標人数の100名に満たないが、現在も測定を進めており、数ヶ月以内に目標人数の100名に達する予定である。 成人の抗体陽性率と小児の抗体陽性率を比較し、両者の違いも明らかになりつつある。サイトカインに関しても、既にIL-8,IL-22mRNA発現量の測定を開始している。またさらに今後測定するサイトカインを増加する準備が既に整っている。 以上の点よりおおむね順調に研究は進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は化学物質特異的抗体値(IgG,IgE)とアレルギー症状の有無・症状の重症度との関係を明らかにする。さらに化学物質特異的抗体に関連するTh2サイトカインや転写因子の発現などの網羅的な解析、バイオマーカーの探索を行う。またそれらの結果を成人と小児で比較する。
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