研究実績の概要 |
【目的】我々に身近な化学物質である樹脂(プラスチック)曝露と乳幼児期のアレルギーの発症・増悪に関する因子を解明するための研究を行ってきた。今年度は下記の化学物質特異的抗体値及びサイトカインの発現量を測定した。化学物質:ED(エチレンジアミン)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、MMA(メタクリル酸メチル)、TMA(無水トリメリット酸)、GMA(メタクリル酸グリシジル)の5種類である。サイトカイン:IL-6,8,10,22 【対象と方法】方法:対象者 乳幼児202名(男児111名 平均月齢19.0ヶ月、女児91名 平均月齢 20.6ヶ月)。成人 44名(男性27名 平均年齢48.4歳、女性17名 49.4歳)、ドットブロット法にて抗原特異的IgG抗体値を測定した。 【結果】ED, GMA:乳幼児の化学物質特異的IgG陽性(>0, <3.125μg/ml)率はそれぞれ17%、34%に対し、成人は5%,11%の陽性率であった。HDI:乳幼児の化学物質特異的IgG陽性(≧3.125μg/ml)率は5%に対し、成人は9%の陽性率であった。MMA,TMA:乳幼児の化学物質特異的IgG陽性(≧12.5μg/ml)率はそれぞれ0%,11%に対し、成人は2%,9%の陽性率であった。サイトカインmRNA発現量と化学物質特異的IgG値を比較したが有意な関係は認められなかった。 【考察】化学物質ごとに乳幼児と成人で陽性を示す割合は異なる。乳幼児でも陽性を示す化学物質に関しては、感作時期・経路に関して、出生前の影響も考慮する必要がある。また今回成人の測定者数が44名と少なく、今後人数を増加しての検討が必要である。 【結論】乳幼児と成人の化学物質特異的IgG抗体の陽性率は化学物質によっても異なっている。同じ種類の樹脂中に同時に含まれているものに対して、それぞれの化学物質特異的抗体が同様の傾向を示すのか検討する必要がある。今後さらに対象者数、対象とする化学物質、サイト間の種類を増加し詳細な研究を施行する必要がある。
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