研究課題/領域番号 |
25860476
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
廣井 聡 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 主任研究員 (40455548)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インフルエンザ / NA / H1N1 |
研究概要 |
抗インフルエンザウイルス薬の作用点であるノイラミニダーゼ(NA)は、ヘマグルチニン(HA)と共にインフルエンザウイルスの表面に存在する糖タンパクで、シアル酸を切断するシアリダーゼ活性を持つ。地方衛生研究所において毎シーズン実施されるインフルエンザウイルス流行株の解析は、HA活性を用いた赤血球凝集抑制試験による抗原性の解析が中心であり、NAについては通常は薬剤耐性変異の解析のみを行っている。そこで本研究では、2009年から流行がみられるA型インフルエンザウイルスH1N1pdm09の臨床分離株のNA活性がインフルエンザの流行形成やウイルスの性状に影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的とした。 初年度は、平成21年度から24年度の間に大阪府の病原体サーベイランスで分離され保存されているH1N1pdm09の臨床分離株の中から異なる時期に分離された50株(薬剤耐性株を含む)を選んで、MDCK細胞で継代した後にNA活性について検討を行った。各ウイルス株のHA価、TCID50を測定し、HA価およびTCID50を基準として蛍光法によりNA活性を測定した。その結果、どちらを基準として測定した場合でも株によってNA活性が異なることが明らかとなった。HA価を基準として測定した場合、NA活性はRFU値で最大約10倍の差があった。また、NAにH275Y変異を持つNA阻害薬耐性インフルエンザウイルスでも感受性株と同じように株によってNA活性が異なっていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の実験は概ね計画に沿って進んでおり、A型インフルエンザウイルスH1N1pdm09の臨床分離株は株によってNA活性に違いがあることを確認した。次年度も計画に沿ってウイルスの解析を進める予定であるが、用いたウイルスの中に力価が非常に低い株が存在するため、それらの株についてはウイルスを継代して引き続きNA活性の測定を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後はウイルスの塩基配列や増殖性を解析し、NA活性とウイルスの性状との比較を行う。HA-NAバランスの観点からHA価を基準としたNA活性の影響について検討を進めたいと考えている。また、各ウイルス株を得た時期によってNA活性にどのような特徴があるかを検討し、それを実際の流行状況と比較する。これらの結果を総合してインフルエンザの流行形成やウイルスに及ぼすNAの影響を明らかにし、臨床分離株のNA活性を解析する意義について検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
一部の実験は次年度も引き続いて行うため繰り越しが生じた。 次年度も主に研究を行うための消耗品に使用する。また、学会への出席や論文の投稿にかかる費用にも使用する予定である。
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