研究実績の概要 |
本邦における小児集中治療領域での薬剤性有害事象と薬剤関連エラーの疫学を明らかにするために、研究実施計画通りにNICU,PICU,ICUを対象に多施設ヒストリカルコホート研究を実施した。平成25年度から26年度にかけて小児集中治療を要する患者を対象として薬剤性有害事象と薬剤関連エラーを抽出したデータベースを作成し、上記データベースを平成27年度に解析した。 224人4478患者日の集中治療を受けた小児患者で検討した。低出生体重でNICUに入室した患者は69人、3270患者日、低出生体重ではないが、NICU入室を要した患者は100人、944患者日、PICUに入室した患者は18人、157患者日、ICUに入室した患者は37人、107患者日であった。投与されていた薬剤数の中央値(四分位)は、低出生体重でNICU入室患者は4(3,6)、低出生体重でないNICU入室患者は2(2,3)、PICU入室患者は6(5,7)、ICU入室患者は7(4,10)であった。薬剤性有害事象と薬剤関連エラーの件数はそれぞれ、低出生体重でNICU入室患者は44件と112件、低出生体重でないNICU入室患者は2件と36件、PICU入室患者は2件と1件、ICU入室患者は9件と15件であった。このことから、それぞれの発生率は、低出生体重でNICU入室患者は13.5/1000患者日と34.3/1000患者日、低出生体重でないNICU入室患者は2.1/1000患者日と38.1/1000患者日、PICU入室患者は12.7/1000患者日と6.4/1000患者日、ICU入室患者は84.1/1000患者日と140.2/1000患者日であった。この発生率から、ICU入室患者は他の病棟と比較して発生率が高く、小児のICU入室時には、薬剤性有害事象や薬剤関連エラーを念頭においた診療が必要であることが明らかになった。
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