研究課題
若手研究(B)
児童虐待などにおいて眼内所見が重要であることは,法医学的にも広く知られている.しかし,眼底検査は熟練を要し,訓練を受けた眼科医にしか行うことができないものである.また,死亡してから時間が経過すれば,角膜は混濁し,一般の眼底検査では,眼内所見の確認もできなくなることから,今まで死体の眼底検査は,その重要性は指摘されながらも,法医実務においては,未だに詳細な検討がなされていない.近年,コンピュータ断層撮影(Computed Tomography;以下CTと略す)による死亡時画像診断を行う施設が増えており,頭部CTを撮影すれば自ずと眼球のCTが撮影されることとなり,今後,眼科医でなくても眼内異常所見に遭遇する機会が増えることが予想される.本研究の目的は,死後撮影CTにおいて,どのくらいの大きさのどのような眼内異常所見であれば捉えることができるかを明らかにすることである.我々は,CTと同様に非侵襲的で,より検出感度の高い眼超音波検査を用いて眼内異常所見の検出を行っている.眼超音波検査は,硝子体出血だけでなく,硝子体混濁や眼内異物,網膜剥離や増殖硝子体網膜症などの網膜硝子体所見や網膜下である強脈絡膜所見の検出に優れていて,さらに眼内視鏡や病理検査とは違い,病変の大きさを簡便に計測できるのが特徴である.平成26年3月末日までに51例,102眼の眼超音波検査とCTの比較を行った.年齢は0歳から90歳(中央値66歳),男性34例,女性17例であった.眼超音波検査で確認された所見として,死後の網膜皺壁,上脈絡膜出血,星状硝子体症等があった.死後の網膜皺壁については,高率に観察され,網膜皺壁の大きさによってはCTでも観察可能と思われた.上脈絡膜出血については,全例CTでも確認され,発症と死因との因果関係が考えられた.次年度はさらに症例数を増やして,CTで確認できる病変の大きさの限界の検証と,これら所見の発症機序の解明を行っていきたい.
2: おおむね順調に進展している
平成26年3月末日までに51例,102眼の眼超音波検査とCTの比較を行った.上脈絡膜出血については,全例CTでも確認され,発症と死因との因果関係が考えられ,平成26年6月に福岡県で開催される9th International Symposium ADVANCES IN LEGAL MEDICINEで発表予定である(採択済み).
次年度はさらに症例数を増やして,CTで確認できる病変の大きさの限界の検証と,これら所見の発症機序の解明を行っていきたい.
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Legal Medicine
巻: 16 ページ: 197-200
10.1016/j.legalmed.2014.03.006
法医学の実際と研究
巻: 56 ページ: 47-52