研究課題/領域番号 |
25860487
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
船越 丈司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40444715)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コレステロール / オートファジー / ノルエフェドリン / 塩基性薬物 / 細胞死 |
研究概要 |
本研究は、法医実務上扱われる薬毒物の中でも一般に使用されていることから、その毒性の検討が特に重要と考えられる塩基性薬物において散見される細胞内空胞化に着目し、これら薬物によって誘導される細胞内空胞化の詳細な誘導機序および毒性発現機序を明らかにすることを目的としている。そこで当該年度においてより詳細な空胞化誘導機序を検討するためにDNAマイクロアレイ法により塩基性薬物投与群の遺伝子発現の変化を検討したところ、脂質代謝に関する遺伝子群、特にコレステロール生合成に係わる分子の発現の顕著な増加が見られ、さらにリアルタイムPCR法により確認したところ、同様の結果が得られた。また細胞内のコレステロールの挙動を蛍光染色およびGC-MSにより検討したところ、塩基性薬物投与群ではLDLコレステロールの取り込みと、細胞内に顕著なコレステロールの蓄積が観察された。塩基性薬物の投与によりオートファジーが誘導され、その一方でリソソーム障害を引き起こすことでオートファジーを完了できなくなることが示唆されていたが(Funakoshi et al. Brain Research, 2013)、今回の結果から塩基性薬物の投与により、細胞内の脂質代謝に大きな変化が起こることが明らかとなった。神経細胞内におけるコレステロールの蓄積はアルツハイマーやニーマンピックC病などに見られ、神経細胞死の発生機序の一つと考えられており、そのことからも塩基性薬物の過剰投与における神経細胞死の一因として細胞内コレステロールの異常蓄積が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた薬物暴露後の細胞内遺伝子・タンパク質発現パターンの解析、ウェスタンブロッティング法によるシグナル伝達物質活性化の検討により、薬物暴露群でのコレステロール生合成系分子の発現を確認でき、GC-MSによる解析から細胞内コレステロールの異常蓄積を明らかにできたことから、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
塩基性薬物の投与により細胞内にコレステロールの異常蓄積が見られることが明らかとなったため、今後はコレステロールの異常蓄積からどのような細胞死を誘導するかを明らかにすることを計画している。具体的には、siRNAによる発現抑制あるいは阻害剤による機能抑制により塩基性薬物による細胞死経路の詳細および細胞死の形態を特定することである。またここまでの研究はすべて神経細胞のモデルとして培養細胞を用いて行っているが、一個体に対する影響を検討するために、マウスを用いた実験も計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初測定を企業に測定依頼をする予定であった計測を当教室の機器で行うことが出来たため、その分の費用を次年度の実験に使用したいとの理由から。 次年度行う測定実験でのカラム・バイアル等の消耗品に使用する予定である。
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