研究課題/領域番号 |
25860488
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
古川 智之 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (60422888)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胸腺ハッサル氏小体 / 児童虐待 / 海馬 / 視床 / 脳下垂体 / 副腎 |
研究概要 |
複雑な時代背景のためか、虐待通報数は毎年増加し、減少する兆しさえ見えない.我々の教室においても、県と大学との委託契約で、虐待児の生体鑑定を実施している。また、残念なことに、毎年、虐待に基づく死亡例があることも事実である。解剖例で、司法当局からの質問事項の一つに『虐待の持続期間』がある。各所に見られる損傷の治癒状態等から、持続期間の推定を試みてはいるが、新旧の損傷があり、治癒損傷が混在すると、推定が困難となる場合があり得る. 胸腺存在するハッサル氏小体の形態学的変化や免疫組織化学的変化が、虐待持続期間推定根拠の一つとなれば、今後の鑑定業務に寄与するところが大きい。 本研究では、形態的面、機能的面から、複雑怪奇な胸腺ハッサル氏小体を主として、ストレス状態下での各臓器の動きとの関連を、ストレス下で生じている細胞内のSignal transduction pathways, gene regulation, cell proliferation を解明したい。 胸腺Hassall corpuscle と海馬・視床下部・副腎の関わりを明らかにし、その結果を虐待の有無判定に役立て、さらには、胸腺Hassall corpuscle の役割を明らかとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.胸腺ハッサル氏小体の形態分類化 今まで当教室で行ってきた剖検例について形態によって分類することができた。 2.胸腺ハッサル氏小体の加齢変化 最高齢102歳までの胸腺を染色し検討している。 3.胸腺ハッサル氏小体の染色性はケラチンよりもムチンで高い傾向を確認している。 4.胸腺ハッサル氏小体に発現される抗原 様々な抗体を用い、ハッサル氏小体に発現される抗原を検索する。抗体との反応部位について立体構築し、ハッサル氏小体内のどのような部位で抗原発現がなされているかを検索した。 5. 胸腺ハッサル氏小体に発現される抗原と胸腺皮質髄質細胞の関連の検討を様々な染色法、免疫染色を駆使し 、染色結果を顕微鏡にて取り込み画像データベースのデータを蓄積中である。
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今後の研究の推進方策 |
ハッサル氏小体のT 細胞分化の統合指揮という役割から、ストレスに対応し、T 細胞の分化を促すが、様々な抗 原に対応するT 細胞分化が生じるため、ハッサル氏小体が、逆に、T 細胞からの攻撃を受け、自己防御機構を備 えているのではないかというWatanabe 等による仮説のもとに、ハッサル氏小体の防御機構を明らかにする。 ハッサル氏小体に発現されている糖鎖抗原と細胞攻撃の結果が残されると推定した補体関連抗原との関連を検討する。 また、様々のストレスに対応するハッサル氏小体の動きを検討するため、Wnt 関連遺伝子、その他の抗原に対す る抗体(RBM3、CIRBP、e-NO, SIRT 1, HIF1, HSP 70, Ngb 等)による免疫染色を行うとともに、RNA の発現も検討する.小児例及び母子のハッサル氏小体を数例得られており、また、母子では似かよった形態を示していることから親子鑑定の一資料として使用できるか検討していきたい。
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