研究課題/領域番号 |
25860489
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
古宮 淳一 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (60363280)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心肺蘇生法 / 飲酒者 / 心拍再開 / 救急医学 / 法医学 |
研究概要 |
飲酒中の心肺停止患者における心肺蘇生法(CPR)効果に及ぼす飲酒の影響を検討する前提として、低酸素曝露により実験的に心肺停止状態としたラットのCPRによる心肺蘇生過程について病態解析を行った。 ウレタン麻酔したWistar系雄性ラットの三肢に心電図(ECG)用電極を装着し、低酸素曝露専用ケージに入れた。ECGはユニークメディカル社のUAS-308Sデータ収集システムで解析した。生理食塩液腹腔内投与(19 ml/kg)の30分後、窒素充填によりケージ内酸素濃度(20.9%)を3%にしてラットの呼吸を停止させた後、以下の実験(1および2)を行った。なお、CPRは指による胸部圧迫心臓マッサージ(約300 bpm)およびマスクによる100%酸素投与を10分間施行した。CPRにより心拍数が200 bpmを超えた場合に心拍再開又は心拍回復と判定した。心拍再開後又は心拍回復後は100%酸素投与のみ行った。 実験1(心静止群):自発呼吸が停止し、心静止状態となったラット(n=9)にCPRを行ったが、心拍の再開はいずれも認められなかった。実験2(非心静止群):呼吸停止から3分後(C3群, n=10)、4分後(C4群, n=10)および5分後(C5群, n=10)にCPRを開始し、心拍回復の有無を確認した。心拍回復率はC3群50%、C4群40%およびC5群0%であった。心拍回復率は、自発呼吸停止から心肺蘇生処置開始までの経過時間に伴って低下した。 自発呼吸停止ラットに心肺蘇生処置を行ったところ、心静止群では心拍再開はなかったが、非心静止群の一部ではほぼ正常な心拍数まで回復するラットが認められた。自発呼吸停止後の非心静止ラットは、実験的心肺蘇生モデル動物の一つとして使用可能と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、飲酒由来のエタノールが心臓の拍動再開能力に抑制的な影響を及ぼすか否か、また、影響を及ぼすとすればどのような機序が関与しているのかを動物実験から明らかにすることである。我々はこれまで、低酸素曝露で自発呼吸停止状態となったラットを用いた心拍停止モデル実験を行っており、呼吸停止から心静止に至るまでの心電図、心拍数および血中酸素飽和度などの経時変化に関する基礎的データを得ている。さらに、自発呼吸の停止したラットを心静止群および非心静止群に分けてCPRを行った結果、自発呼吸停止後の非心静止ラットは、実験的心肺蘇生モデル動物として使用可能と考えられるデータが得られている。以上の研究経過は本研究目的に沿っており、おおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究実施計画に沿って研究を推進する。エタノール投与ラットを用いて心拍停止モデル実験を行い、それらの心拍回復率、心電図および血中酸素飽和度などのデータを対照ラットと比較検討する。また、エタノールの心拍回復抑制作用機序を検討するために、ナトリウムチャンネル阻害薬であるリドカインやカルシウムチャンネル阻害薬であるベラパミルを前投与したラットを用いて、心拍停止モデル実験を行う。さらに、mRNA解析用に心筋を採取し、小胞体ストレス関連蛋白(GRP78, CRT, CHOP)をRT-PCR法で測定する。得られた研究結果を取りまとめ、学会や論文等で成果発表を行う。
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