昨年度、引き続き乳幼児突然死における代謝疾患について検討を行った。 ①脂肪酸代謝異常症について:計60例の乳幼児突然死症例に対し、脂肪酸代謝異常関連・ミトコンドリア呼吸鎖関連遺伝子の変異解析スクリーニングを次世代シークエンサーにより行った。また、死亡時の血液の代謝産物測定をタンデムマスにより行った。検出された遺伝子変異の中から、過去に疾患との関連が報告されている変異を抽出し、乳幼児突然死群とコントロール群との統計学的解析を行ったところ、CPT2遺伝子F352C変異において、有意差が認められた。血中アシルカルニチン解析を行ったところ、ハプロタイプ間で統計学的有意差は認められなかった。 ②ミトコンドリア疾患について:ミトコンドリア疾患の一つであるLeigh脳症のモデルマウス(NDUFS4fky/fky)に対しBezafibrateを連日経口投与したところ、0.05%群で生存率の改善が認められることが知られているが、Bezafibrate投与群・非投与群について、ミトコンドリア関連蛋白質の発現について検討した。心臓・肝臓ではBezafibrate投与により複合体Iの発現が増加したが、生存率との関連は認められなかった。筋肉・脳では一定の傾向は認められなかった。 今回の研究では、Metabolic Autopsyの手法を用いることで代謝疾患と突然死との関連を見いだした。従来の形態的変化に頼る解剖手法では解明できなかった新たな知見を見いだすことができたものと考える。さらに、薬物投与により早期治療・予防も可能であり、突然死自体の回避へと繋がる可能性が期待される。
|