これまでに実施した動物実験の結果に基づいて,乳幼児法医剖検例から採取した胸腺に対してレプチンレセプターの免疫染色行い,ストレス性退縮胸腺と非退縮胸腺で比較・検討した。レプチンレセプター発現胸腺ストローマ細胞の分布・密度は退縮胸腺と非退縮胸腺の間で差が認められなかった。退縮胸腺では全体に高度な線維化が認められたが,線維化した部分にレプチンレセプター発現胸腺ストローマ細胞は認められなかった。退縮胸腺におけるレプチンレセプター発現胸腺ストローマ細胞は胸腺細胞と同様にアポトーシスを起こして減少した可能性があり,胸腺内におけるレプチンレセプター発現胸腺ストローマ細胞の意義は依然として不明である。 次いで,IL-7レセプターについても同様に免疫染色を実施した。非退縮胸腺においてIL-7レセプター発現胸腺ストローマ細胞は胸腺髄質の実質内だけに分布していたが,退縮胸腺においてはわずかに残存した胸腺髄質実質内だけでなく,線維化した部分にも分布していた。退縮胸腺では胸腺細胞がアポトーシスを起こすだけでなく,線維化によって実質の一部が結合組織に置き換わっている可能性が考えられた。このため,ストレス性退縮胸腺における胸腺機能の低下は不可逆的な可能性があり,将来的な免疫機能に影響を及ぼす可能性があると考えられた。 また,レプチンの血中濃度と胸腺内のレプチンレセプター発現胸腺ストローマ細胞との関連を調査するため,法医剖検事例から採取した血液について,レプチン濃度を測定した。死体血について血中レプチン濃度の報告はこれまでになく,測定された濃度を評価するにあたり死因,死後経過時間,栄養状態,皮下脂肪量,胃内容量などとの関連について検討を行い,基礎的な検討を行った。その結果,死体血中のレプチン濃度は死後変化の影響を受けにくいことが示された。
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