研究課題
近年、マクロファージ(Mφ)の活性化の違いが様々な疾患の病態形成や消長と深く関連するため、Mφの活性化制御が疾病の予防や治療に有効であると考えられている。腫瘍組織においては、オルタナティブ活性化Mφ (M2Mφ)が腫瘍血管の形成促進や抗腫瘍免疫の抑制により腫瘍の進展に関与し、一方、古典的活性化Mφ (M1Mφ)は抗腫瘍免疫を活性化することで、腫瘍の進展を抑制することが知られている。ゆえに、癌ではMφをM2MφからM1Mφに転換できれば癌の治療への応用が期待できる。我々はこれまでの研究で、STAT3の活性化を抑制することでMφの活性化状態をM2からM1に制御する天然化合物であるOnionin AおよびGarlicnin C等の候補化合物を同定し、in vivoにおける有効性も明らかにした。そこで本年度は、これら候補化合物の腫瘍移植モデルマウスにおける既知抗癌剤との併用効果を検討した。具体的には、骨肉腫および卵巣癌移植モデルマウスに候補化合物とシスプラチンを投与し、腫瘍の発育・転移ならびに生存率を比較したところ候補化合物あるいはシスプラチン単独では効果がみられない低濃度でも、両者の併用により、高濃度シスプラチン単独と同等の抗癌効果が認められた。また、本研究により候補化合物の抗癌作用には、癌細胞のSTAT3経路の活性を抑制する直接的作用と、MφのSTAT3経路の阻害によりM2Mφへの分化を抑制し癌細胞の増殖を抑える間接的作用が存在することが示唆された。つまり、候補化合物と各種抗癌剤の併用により、癌細胞増殖の重要な制御因子であるM2Mφへの分化抑制作用がさらに加わり、癌の進展に関わる微小環境を変化させる可能性が考えられた。ゆえに、Onionin Aをはじめとした候補化合物は、STAT3経路をターゲットとすることで癌細胞への直接的作用だけではなく、がん微小環境もコントロール癌根治を目指す、新規治療戦略となりうる可能性が示唆された。
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