摂食障害(神経性食欲不振症及び神経性過食症)は欧米のみならず、本邦においても思春期女性を中心に増加傾向が認められ、2011年3 月の厚生労働省研究班の発表では、女子中学生の約100人に2人が摂食障害であるとの調査結果であり、決して稀な疾患ではない。しかしながら、摂食障害は多元(生理・心理・社会)的な発症因子を持ち、その病態生理においては明確な知見が得られていないため、現在、薬物治療、認知行動療法や家族療法などの種々の治療が行われているにもかかわらず、治療に難渋することが多い。 脂肪細胞から分泌される生理活性物質は、総称してアディポサイトカインといわれる。アディポサイトカインのひとつであるアディポネクチンは、肥満者においてはその血中濃度が低く、アディポネクチンの低下は2 型糖尿病や心血管疾患の発症と関連が深いといわれている。最近、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンはヒトの情動と関連していること、また3 種類の多量体構造で存在し、これらが体重増減に関わることが判明した。本研究は摂食障害患者の食欲や食行動調節におけるアディポネクチン3分画の機能について様々な角度から検討し、摂食障害の病態解明および治療につなげることが目的である。 具体的には、摂食障害患者の治療前後において、①体重、摂食量の変化量、②心理テストのスコア変化量、③前頭葉脳血流および脳波変化、④生化学的データ、アディポネクチン3 分画および各種食欲調節ペプチドの変化との関連を評価することにより、摂食障害における食欲や食行動調節とアディポネクチン3 分画との関連について明らかにしたいと考えている。 昨年度は、本研究における新規の摂食障害患者は3症例であり、本年度は患者リクルートにおいて、さらなる工夫が必要であると考えている。
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