本研究は未だほとんど報告されていない高齢者に対する健診の結果やメタボリックシンドロームの治療内容・効果を検討するために,特定健診から調査した。 健康診断センターで特定健診を受けた65歳以上の高齢者638名のうち,前年からの連続受診者478名を対象とした。血圧,血液検査〔中性脂肪,HDLコレステロール,LDLコレステロール,HbA1c(NGSP)〕,病状の推移,治療内容を調査項目とした。 結果として,(1)脂質異常〔中性脂肪≧150mg/dLまたはHDLコレステロール<40mg/dLまたはLDLコレステロール≧140mg/dL〕:前年脂質異常を指摘されたのは38.4%であった。前年以降薬物治療を受けたのは22.8%(p<0.01)であり,このうち今回改善したのは47.6%であった。(2)高血圧〔収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHg〕:前年高血圧を指摘されたのは34.7%であった。前年以降薬物治療を受けたのは59.0%であり,このうち今回改善したのは40.8%であった。(3)糖尿病〔HbA1c(NGSP)≧6.5%〕:前年糖尿病を指摘されたのは6.9%であった。前年以降薬物治療を受けたのは60.6%であり,このうち今回改善したのは20.0%であった。 このように,高齢者の脂質異常に対して積極的に治療を開始し,高血圧と糖尿病のコントロールを適切に行う必要性が示唆された。また,健診の状況を追跡することは,実地臨床では不明である治療を受けていない患者の転帰がわかるという特有の利点があると考えられる。
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