研究課題
若手研究(B)
1)食道扁平上皮癌(ESCC)細胞株TE11、ヌードマウスを使用したxenograft実験を行った。Notch1を活性化させると腫瘍増殖が促進され、腫瘍内の癌幹細胞様細胞(CD44High/CD24Low細胞)が有意に増加していた。TGF-b1の中和抗体である1D11投与では腫瘍増殖は抑制され、CD44High/CD24Low細胞は減少した。Notchの阻害剤であるγセクレターゼは単独投与では腫瘍増殖に変化が認められなかったが、1D11とγセクレターゼを同時に投与することで最も強い腫瘍抑制効果およびCD44High/CD24Low細胞抑制効果が認められた。これらの実験結果は、TGF-β及びノッチシグナルがEMTを介してCD44High/CD24Low細胞を維持、増幅しており、これらの経路が癌幹細胞を標的とした治療法のターゲットとなり得ることを示唆している。2)CD44High/CD24Low細胞で特異的に発現するmRNA、miRNAの網羅的解析を行った。FACSAriaIIIによりCD44High/CD24Low細胞とCD44Low/CD24High細胞を分離し、DNAマイクロアレイ、次世代シーケンサーを用いたmiRNA発現解析を行った。マイクロアレイによるmRNAの網羅的解析では、CD44High/CD24Low細胞においてfibrolblast growth factor 2 (FGF2)が著明に上昇しており、FGF2がCD44High/CD24Low細胞において重要な役割を担っている可能性が考えられた。FGF2阻害剤を用いると、軟寒天コロニー形成アッセイで有意にコロニー形成能が抑制された。miRNAの網羅的解析に関しては条件設定の段階である。
2: おおむね順調に進展している
TGFβ阻害剤、ノッチ阻害剤を用いた動物実験では仮説を裏付ける結果が得られており順調に進行している。また、mRNAの網羅的発現解析は順調に進行しており、いくつかの興味深い遺伝子が上がってきている。今後は絞り込んだ候補遺伝子の解析を進めていく。一方でmiRNAの網羅的発現解析は具体的な結果がまだ得られておらず、今後進めていく。また、予定していた臨床検体を用いた免疫組織染色が未着手である。以上の状況から達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した。
【ESCCにおけるFGF2の機能解析】前年度の網羅的mRNA解析で同定されたFGF2のESCCにおける機能解析を進めていく。【臨床検体を用いた癌幹細胞の同定・分離】ESCCの臨床検体(生検検体、内視鏡切除検体、手術検体)よりコラゲナーゼI、ディスペースを用いて速やかにsingle cell suspensionを作成する(Proc Natl Acad Sci U S A. 100;3983:2003を改変)。血球および血管内皮細胞は抗CD31抗体、抗CD45抗体、抗TER119抗体を用いて除外し(Nature. 439;84:2006)、死細胞は7-AADを用いて除外する。抗CD44抗体、抗CD24抗体で染色し、セルソーター(FACSAria)を用いてCD24High/CD44Low細胞およびCD24Low/CD44High細胞を分離する。分離した10~10000個の細胞をヌードマウスの皮下へ移植する。臨床検体においてもCD24Low/CD44High細胞が癌幹細胞であることを確認する目的で、移植6~8週後にマウスをと殺し、腫瘍増殖、CD44High/CD24Low細胞の割合、TGF、Notchシグナルの活性を評価する。臨床検体ではCD24Low/CD44High細胞が癌幹細胞ではない可能性も考えられる。その場合にはCD133、ALDH1活性(ALDEFLUOR)も含めた検討を行い、癌幹細胞を同定する。また、臨床検体から分離された腫瘍細胞がマウス内で腫瘍形成できない可能性も高く、その場合には三次元培養やスフェロイドアッセイを用いて評価する。【臨床検体を用いたTGF-β及びNotch阻害剤の有効性の検討】臨床検体における癌幹細胞が同定された後には、臨床検体から得られた癌幹細胞をヌードマウスに移植し、TGF-βシグナルおよびNotchシグナル阻害剤、抗癌剤(5FU、CDDP)の投与を行い、上記2)と同様に解析する。
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