研究実績の概要 |
初年度は,卵膜由来間葉系幹細胞の経静脈的投与がラット炎症性腸疾患モデルに対してその病態を改善することを明らかにした.また,前年度の研究では,in vitroの系で間葉系幹細胞の培養上清が抗炎症効果を示すことが明らかとなった,最終年度は,培養上清の注腸投与が炎症性腸疾患の動物モデルに対して効果を示すのか確認し,また培養上清に含まれる重要な因子を同定することを目的として実験を行った. 動物モデルはラットにTNBSを注腸投与して作成し,同日より卵膜由来間葉系幹細胞から得られた培養上清を3日間連続で注腸投与した.TNBS投与7日後に屠殺し,内視鏡学的評価ならびに病理学的評価を行った.コントロール群に比べ,培養上清投与群では有意に内視鏡スコアが改善していた.病理スコアは培養上清投与群で改善傾向にあり,免疫組織染色では好中球ならびにマクロファージ,Tリンパ球の直腸への浸潤が有意に減少していた.また,直腸における炎症性サイトカインの発現を定量的PCR法で解析したところ,培養上清の投与によりTNFaの発現が有意に減少し,IL-1b, CXCL1, CCL2の発現が低下傾向を示した.以上のことから,卵膜由来間葉系幹細胞の注腸投与が炎症性腸疾患モデルラットの病態を改善することが明らかとなった. また,培養上清に含まれる重要な新規因子を幾つか同定し,そのうちの一つを炎症性腸疾患の動物モデルに投与して,その効果を解析中である.
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