研究課題/領域番号 |
25860523
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤田 めぐみ (田坂 めぐみ) 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (50510369)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウイルス / 免疫学 / シグナル伝達 / インターフェロン誘導性遺伝子 |
研究概要 |
1、HuH-7細胞のサブクローニング(藤田) HuH-7細胞は様々な細胞から構成されるポリクローナルな細胞集団であることから、より詳細な解析のためモノクローナルな細胞集団を作成した。 2、サブクローニング細胞の2次選別(藤田、坂本) 得られたモノクローナルな細胞株に Poly I:C、HCV-RNAをそれぞれリポフェクションまたはエレクトロポレーションにより遺伝子導入し、培養した。遺伝子導入後、細胞を回収し、抽出したRNAからcDNAを合成した。ISGsに対するプライマーを用いてインターフェロン誘導性遺伝子(ISG)誘導能を定量し、比較検討した。 3、HCV感染細胞における ISG 誘導能の検討(藤田、加藤) 上記の方法によって得られた細胞に、HCV培養上清添加によりウイルスを感染させ、培養後経時的に細胞を回収した。回収した細胞から RNAを抽出し cDNA を合成した後、Real time PCR 法 によりそれぞれに対するプライマーを用いて同様にISGs の誘導について解析した。 申請者らは独自に単離した肝細胞由来培養細胞を用いてIII型インターフェロン(IFN)による C 型肝炎ウイルス(HCV)排除に関わるメカニズムについて解析を進めている。目的と照らし合わせ、 (1)Huh-7.5.1 細胞における IFN シグナル誘導の詳細を解析し、確認し得た。 (2)その結果をもとに Huh7 細胞をサブクローニングし、よりISGが誘導される細胞株を同定し得た。(3)得られた細胞に自立増殖が可能な HCV 株を感染させることはできなかったが細胞株を再検討することで新たにIFN-λの強い誘導を確認出来る細胞株を発見できた。 これらの知見により、新たな抗ウイルス療法開発の基盤を形成していく目的を達成出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、HuH-7細胞のサブクローニング 細胞混濁液を1ウェル当たり細胞1個になるよう希釈後、96ウェルプレートに播種し得られたコロニーをさらに培地をスケールアップしつつ継代培養していく限外希釈法を用いた。計画どおりモノクローナルな細胞集団を予定通り作成しえた。 2、サブクローニング細胞の2次選別 それぞれの細胞集団について定めた数カ所の時点で細胞を回収し、回収した細胞からRNAを抽出後 cDNAを合成した。それぞれの ISGs に対するプライマーを用いて定量 PCR法によりISGs誘導を解析し、解析された結果をもとに比較検討した。 計画どおりクローン化して得られた細胞から特にISG誘導能の高いもの(HuH-7T5細胞)を抽出した。また、IFN-lλの誘導についても検討を加えたが、細胞間で明らかな誘導の違いは認められなかった。 3、HCV感染細胞における ISG 誘導能の検討 得られた細胞への培養上清添加では誘導が確認出来なかった。そこでウイルス量の不足を原因と考え、更に大量の培養上清を用意した。ホローファイバーを用いて得られた培養上清を濃縮し、同様に細胞へ添加したが、この方法を用いても感染は確立できなかった。従ってHCV感染による誘導が確認出来なかったため、HCV-RNAの遺伝子導入による検討を進めた。尚、感染による誘導については初代ヒト肝細胞でも検討を行ったが、この場合も感染が確立できなかった。更に細胞種を変更しHepa RG細胞を用いてHCV RNAを導入したところMxA、2-5OASなどのISGsの明らかな誘導は確認されなかったが、IFN-λの強い誘導を確認することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
Hepa RG細胞においてHCV RNAによる著名なIFN-λ誘導は確認されたが、ISG誘導を確認されなかったため、平行して別の方向からのアプローチも進めて行く。 IFN+リバビリン併用療法においては、重要な治療効果予測因子としてHCV core領域アミノ酸70/91番の変異が報告されている。そこでこれらの変異が本研究課題であるIFN-λによるHCV排除に関与する機序についても検討を加えていく予定である。 まず、これらを検討するにあたりGenotype 1b由来の全長ウイルスのcore領域 aa 70番、91番にそれぞれの変異を導入した。作成したウイルスのRNAをHuh7.5.1細胞にエレクトロポレーションにより遺伝子導入した。導入後3日目までの培養上清、細胞を回収しそれぞれのcore抗原量を化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)により測定したが、充分な増殖複製を得られなかった。そこで、活発な増殖複製能を有するJFH-1全長ウイルスのcore aa 70/91にそれぞれ変異を導入しHuh7.5.1細胞に遺伝子導入したが、変異間で明らかなの差を認められなかった。更に構造領域は1b(TH)由来、非構造領域は2a 由来(JFH-1)のキメラウイルスを作成したところ充分な増殖複製が確認され、またcore aa 70変異株では培養上清中のウイルス量が有意に低値となっていた。またこれらのRNAをHuh7.5.1細胞に導入したものに、まずは IFN-α 10 IU/mlを添加しその感受性について検討したところ、いずれの変異を導入したウイルスにおいても同様にウイルス量は減少し変異株間での差は見られなかった。 今後は作成したこれらのウイルスを用いてIFN-λに対する感受性についても検討し、両者で発現するISG量を比較することでIFN-λによるHCV排除の機序について解析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。 検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
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