研究課題
若手研究(B)
本年度は研究計画に基づき、以下の解析を行った。(1)申請者は、内視鏡検体より得たヒト大腸上皮細胞を長期に培養しうる技術を新規に確立した。既に得られている培養の基礎知見に基づき、用いる増殖因子としてのリコンビナント蛋白の組み合わせ、濃度などを最適化した。さらに既存の細胞培養に用いられる様々な細胞外基質を検討し、ヒト大腸上皮培養に最適と考えられる基質を見いだした。これにより、多様な患者から得られる生検ヒト大腸組織を用いても、安定したヒト大腸上皮幹細胞培養が施行可能となった。(2)ヒト腸管上皮における幹細胞の分子マーカーとして知られるOLFM4に着目し、ヒト腸管上皮培養細胞においてin situ hybridization法を用いた発現評価を可能とした。これにより、培養環境中におけるヒト大腸上皮幹細胞集団の解析が可能となった。(3)低分子化合物を利用したマウス大腸上皮培養を行なった。既に培養法を確立しているマウス大腸幹細胞培養法を用いて、幹細胞増殖に必要なシグナル経路を基に選択された種々の低分子化合物を添加して、培養に寄与しうるかを検討した。Wntシグナル増強、BMPシグナル阻害作用を有する低分子化合物を添加することで、リコンビナント蛋白の添加を必要とせずに一定期間の培養が可能となる条件を見いだした。以上の成果は、本研究が達成を目標とする動物由来因子を使用しないヒト大腸幹細胞培養技術の最適化に必須の基盤技術である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、内視鏡生検検体より得るヒト大腸上皮培養法を確立し、安定した培養・実験が可能な条件を見いだした。また、培養細胞におけるヒト大腸上皮幹細胞の分子マーカー発現を評価することも可能とした。ここで得られた知見に基づいて、予定していた低分子化合物および人工ペプチドのみによるヒト大腸上皮幹細胞の培養技術確立を目指した培養条件のスクリーニングが可能となると考えられる。
現在確立している安定したヒト大腸上皮細胞培養法を利用し、今後確立した培養環境で必要とされるWntシグナル刺激、BMPシグナル阻害、さらに基底膜成分との相互関係を模倣しうる低分子化合物および人工ペプチド等の細胞外基質のスクリーニングを行なう。さらに培養細胞の詳細な解析を通じて培養環境において上皮幹細胞が必要とする微小環境を明らかにして行くことで、人工ペプチドが模倣すべき基底膜成分が明らかになると考えられる。
試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e79693
10.1371/journal.pone.0079693