研究課題
腸管上皮幹細胞を体外で増やし傷害臓器へ移入することで正常な消化管機能を取り戻す、再生医療技術に期待が寄せられている。しかしながら細胞治療による腸管上皮再生の試みは未だ基礎段階であり、臨床応用を実現する技術的進歩には多くの障壁が存在する。本研究ではこれらを背景に、高い効率で、より多くの幹細胞を増やしうるヒト大腸上皮幹細胞培養技術を確立すること、さらには単離から培養に至る一切の過程において動物由来因子を全く使用しない細胞調整方法を確立することを目的とし研究を行なった。本年度は、申請者が確立した、内視鏡検体より得たヒト大腸上皮細胞を長期に培養しうる技術(論文投稿準備中)の基礎知見に基づき、(1)培養因子として最適化したリコンビナント蛋白のGMP規格化を進め、培養中に添加する全ての因子に関して、再生医療での使用に耐え得るGMP規格への置換に成功した。(2)マウスでの検討で得た幹細胞増殖に寄与する低分子化合物を添加することで、ヒト大腸上皮培養においてもリコンビナント蛋白の添加を必要とせずに一定期間の培養が可能となる条件を見いだした。また、(3)申請者のグループが以前より取り組んできた大腸上皮培養幹細胞移植モデル(Nat med 2012)を発展させ、新規移植モデルを作成し報告した(Genes Dev. 2014)。この技術により、本研究における異種移植モデルの実現がより容易になることが期待される。以上の成果は、動物由来因子を使用しないヒト大腸幹細胞培養技術の実現に必須の基盤技術であり、一貫して腸管上皮幹細胞培養、腸管上皮移植技術を開発してきた申請者らのみが遂行可能であった独創的研究であるのみならず、今後さらに再生医療実現に向け活発化する多分野における基盤的知見となる研究成果と考える。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件)
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