研究課題/領域番号 |
25860527
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
高野 伸一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (80377506)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 次世代シークエンサー / 膵癌 / IPMN / 膵液 |
研究概要 |
ERCP下に採取可能な膵液は、いまだ膵疾患診断において極めて有用な検体試料である。今回IPMNで見られる遺伝子変異の意義を解明する目的に、次世代シークエンサーによる膵液および切除組織の遺伝子変異検索を行った。 方法は膵疾患精査目的に施行したERCP検査時に採取した膵液および切除組織から遺伝子変異を検索した。DNA抽出後、ターゲットとした癌関連46遺伝子をmultiplex PCRにて増幅し、次世代シークエンサーにてシークエンスを行った。膵液152検体(正常9例、慢性膵炎22例、膵癌39例、IPMN82例)を対象とし、疾患別に遺伝子変異の出現頻度を検討し、IPMNでは臨床因子と遺伝子変異の関連について統計学的解析を行った。また、切除組織27例(膵癌17例、IPMN10例)を対象としシークエンスを行った。本研究は遺伝子解析研究に関する本大学倫理委員会の承認および対象者からの同意を得て研究を行った。 結果1: 膵液抽出DNAからの遺伝子変異検索で、KRAS、TP53変異に加え、GNAS変異を慢性膵炎の4.5%、膵癌の7.7%、IPMNの41.5%に認めた。慢性膵炎でのGNAS変異検出例は微小膵嚢胞が存在しており、膵癌でGNAS変異を認めた症例はIPMNが併存していた。また、IPMNにおけるGNAS変異の臨床的意義を解明する目的で臨床因子との多変量解析をしたところ、GNAS変異と主膵管拡張が関連していた(p<0.001)。結果2:切除組織から、KRAS変異は膵癌の76.9%、IPMNの80%に検出され、GNAS変異はIPMNを合併しない通常型膵癌では検出されず、IPMNの50%で検出された。また、IPMNを併存した通常型膵癌の50%でGNAS変異が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵液およびレーザーキャプチャーマイクロダイゼクションによる切除検体からDNAを抽出し、シークエンスを行っているが、現時点で予定した9割のシークエンスは終了しており、得られた結果から追加の症例のシークエンスを検討している。解析において、腫瘍の良悪性と遺伝子変異の検討を当初予定していたが、腫瘍の良悪性を直接決定する遺伝子変異は同定が困難であり、解析法の変更も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で最も目指したいところは、腫瘍の良悪性を決定する遺伝子変異の同定であり、今後他の解析法を含め検討していく。 また、現時点で得られた結果からは、膵液のGNAS変異が主膵管拡張と相関しているなど、臨床因子との関連が示唆された。IPMNでの主膵管拡張は疾患の悪性と関連しているとも言われており、臨床検体の遺伝子検索が実臨床に応用されるような診断体系の構築も検討中である。
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