研究課題/領域番号 |
25860530
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
岩泉 守哉 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60444361)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロサテライト不安定性 / MBD4 / 大腸がん / 薬物療法 |
研究概要 |
大腸がんの発育進展の原因のひとつであるマイクロサテライト不安定性 (MSI) により誘導されるDNAグリコシラーゼmethyl-CpG binding domain protein 4 (MBD4) のフレームシフト変異が、大腸がん化学療法のKey Drugである5FU系薬剤に対する大腸がん細胞の感受性をどのように変化させるかを解明すること、また、大腸がん細胞内での変異型MBD4の発現が5FU系薬剤投与下におけるMBD4の下流の塩基除去修復 (Base Excision Repair; BER) 経路に与える影響を解析することにより、5FU系ベースの薬物療法の治療効果向上のための標的分子を探ることを目的として研究を行っている。今年度は以下のことが判明した。①変異型MBD4がDNAに取り込まれた5FUに対して高親和性であった。②変異型MBD4がDNAミスマッチ修復蛋白のDNA中の5FUに対する認識、親和性を阻害した。③変異型MBD4発現大腸癌細胞株を樹立した。④樹立したMBD4発現大腸癌細胞株では、S phase arrestを介して 5FUに対する感受性を高めた。 大腸がん患者の5FU感受性を確認することは安全に有効な大腸がん薬物療法を推進する上で重要であり、その中でマイクロサテライト不安定性およびDNAミスマッチ修復機構にかかわりのあるMBD4変異についての病態、治療感受性解析は今後も重要になる可能性があり、来年度以降は臨床データと照らし合わせたトランスレーショナルな検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のことが今年度明らかになった 1.変異型MBD4のDNA中の5FU認識除去能の検討:①変異型MBD4がDNAに取り込まれた5FUに対して高親和性である②変異型MBD4がDNAミスマッチ修復蛋白のDNA中の5FUに対する認識、親和性を阻害する。 2.変異型MBD4存在下での5FU系薬剤感受性変化の検討 ①変異型MBD4発現大腸癌細胞株を樹立した。②樹立したMBD4発現大腸癌細胞株では、S phase arrestを介して 5FUに対する感受性を高める。ほぼ計画通りの進行状況かと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
DNA中の5FUが野生型MBD4に認識除去されその結果PARP1を含む下流のBER経路が活性されることが推測されるが、変異型MBD4では、5FU投与後に下流のBER経路が活性化されないことが予測される。このことを踏まえ、(1)野生型および変異型MBD4安定発現細胞株にそれぞれ5FUを投与後、細胞を回収し蛋白を抽出する。得られた蛋白をWestern Blot法を用いてBER経路に重要な役割を果たす分子群の発現を比較検討する。(2)PARP阻害剤と5FUとの併用投与による細胞障害度が変異型MBD4の発現の有無で変化するのか否か、野生型および変異型MBD4安定発現細胞株を用いてMTS assay およびClonogenic Assayで比較検討する。 5FU系薬剤投与によるDDR経路の活性化に野生型MBD4の発現が必須なのか、さらに変異型MBD4がDDR経路の活性化に影響を及ぼすのかは不明である。また、野生型MBD4はhMLH1と結合し、その結合部位は野生型MBD4のC末端に存在する。すなわち理論上はC末端の欠損している変異型MBD4とhMLH1は結合しないがこの理論を検証した実際の報告はない。これらの背景より、(1)野生型および変異型MBD4安定発現細胞株にそれぞれ5FUを投与後、WesternBlot法を用いてDDR経路に重要な役割を果たす分子群の発現パターンを比較検討する。(2)hMLH1が発現していない大腸がん細胞株HCT116およびhMLH1が発現している大腸がん細胞株HCT116+ch3にそれぞれ野生型MBD4発現プラスミドを導入し、5FU投与下での細胞障害度の違いを比較する。(3)HAタグ付き野生型および変異型MBD4発現プラスミドをそれぞれ遺伝子導入したMSI陰性大腸がん細胞株から抽出した核蛋白と抗HAタグ抗体を使用して免疫沈降を行いWestern Blot法で確認する。
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