研究課題
近年、癌の発症・進展における癌局所の微小環境の働きが注目を集めている。研究代表者らは、複数のサイトカインや増殖因子の活性をシェディングを介して一括して制御するプロテアーゼNardilysin(NRDc)に着目した。本研究ではNRDcが大腸癌進展に関わるメカニズムを明らかにし、NRDcを標的とした新しい抗癌治療法開発に繋がる基礎的知見獲得を目的とした。そのため、平成26年度には、以下の研究を行った。1.AOM/DSS腸発がん、及びApcMin腸腫瘍形成マウスを用いて、NRDcノックアウトの影響を検討した。すなわち両者において、TNF-alphaの発現を免疫染色、ELISAにより評価した。さらに、TNF-alphaのシェディングをWBならびにELISAで検討した。また下流シグナルであるNF-kappaBの活性化を定量した。これらの検討により、NRDcノックアウトがTNF-alphaのシェディングを弱め、NF-kappaB活性化を低下させることが明らかになった。それに伴い、AOM/DSS腸発がん、及びApcMin腸腫瘍形成は有意に抑制されることが明らかとなった。2. NRDcの大腸癌バイオマーカーとしての意義を解析するため、平成25年度までに集積した症例の血中NRDc濃度を検討した。血中NRDc濃度は、大腸癌のサイズに比例する傾向を確認出来た。3. NRDcを標的とした新たな大腸癌の予防、治療法を開発するために、NRDcのsiRNAを大腸癌や胃癌細胞株に投与した。さらに、マウス大腸内視鏡システムを用いて、AOM/DSS腸発がんマウスの腸腫瘍に対して、NRDc siRNAのデリバリーを試みた。その結果、癌細胞株では増殖の抑制を確認出来た。
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Plos One
巻: 9 ページ: e98017
10.1371/journal.pone.0098017