研究課題/領域番号 |
25860534
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
重川 稔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00625436)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵癌 |
研究概要 |
膵発癌・進展における様々な分子機構を解明することは、早期診断に有用な分子マーカーの発見や新規抗癌治療法の開発のために非常に重要な研究課題である。近年、膵癌の前駆病変としてpancreatic intraepithelial neoplasias(PanINs)という分類が提唱され、異型度に応じてPanIN-1~3へと段階的に進行し、浸潤癌へ進展すると考えられている。膵特異的に変異Kras蛋白を発現する膵発癌モデルマウス(KrasLSL-G12D/+-Pdx1Cre:KrasG12Dマウス)では、2か月頃よりPanINsが形成され、経時的に異型度が進行し、生後1年以上経過したマウスでは浸潤性膵癌の所見が認められる。申請者は、このKrasG12Dマウスにおいて、PanINs、癌部ともに抗アポトーシス蛋白であるBcl-xLの発現上昇を免疫組織化学にて確認した。このことから、膵癌進展早期からBcl-xLが関与している可能性を考え、膵発癌・進展における細胞死機構の解明のために、KrasG12DマウスとBcl-xL遺伝子を強制発現させた遺伝子改変マウスを交配させ、通常のKrasG12Dマウスと比較検討を行い、各々の膵組織像について解析した。 KrasG12DマウスとBcl-xL Tgマウスと交配させBcl-xL強制発現KrasG12Dマウスを作成した。Bcl-xL強制発現KrasG12Dマウスは、生後2か月で40%に、生後4か月で100%に腺癌を認めた。一方、KrasG12Dマウスでは生後4か月でも腺癌は認められなかった。KrasG12Dは生後1年で全例生存していたが、Bcl-xL強制発現KrasG12Dマウスで生存例はなく、有意に予後不良であった。以上より、膵特異的に変異Kras蛋白を発現する膵発癌マウスにおいて、Bcl-xLは腫瘍進展に促進的に働くことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Bcl-xL遺伝子を欠損もしくは強制発現させた膵発癌モデルマウスの作成に成功しており、膵発がん率の解析も順調に進んでいる。In vitroの実験の成果も出ており、本研究課題はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は平成25年度に、Kras遺伝子に変異を認めるヒト膵癌細胞株で、Kras遺伝子を欠損させるとBcl-xL遺伝子発現が低下することを確認している。また、KrasG12DマウスとBcl-xLfl/flマウスを交配させBcl-xL欠損KrasG12Dマウスの作成に成功した。今後、このマウスにおける腺癌発生率などを検討することで、Kras遺伝子変異がBcl-xLの発現を上昇させるメカニズムや、PanINs形成におけるBcl-xLの役割について解析を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進行状況により、当初計画していた研究の順序が前後し、マウスのphenotype解析が一部次年度にずれ込んだため、当該予算を次年度に繰り越しした。 次年度早期にマウスのphenotype解析を行うため、当該予算を使用予定である。
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