研究実績の概要 |
炎症性腸疾患における治療法の効果には関与する遺伝的素因、つまり薬理応答性に関する遺伝的因子の検索をおこなった研究である。我々は広島大学および関連施設にて書面による同意を得た上で提供されるヒト由来試料(血液)および診療情報を用いて、これらを連結可能匿名化おこなったのち、ヒト血液由来試料よりゲノムDNAを抽出したのち、診療情報から患者背景(喫煙歴、飲酒歴、BMIなど)、炎症性腸疾患の病勢の推移と治療法の投与履歴から治療法の効果について解析をおこなった。試料の提供は1000例を予定していたが、545例の収集をおこなえた。収集したサンプルの診療情報を解析し、TNFα製剤の使用者をresponderとnonresponderわけて、代謝経路に関連する遺伝子上にあるSNPにてういて薬効と関連ないか検討をおこなったが、多重検定の結果有為な関連のあるSNPは検出できなかった。有為な結果がでなかった原因としては薬効に関与する感受性遺伝子の検索をおこなったが,炎症性長疾患患者は複数の薬剤を投与されており、治療に効果のあった薬剤しなかったり、薬剤の組み合わせによってよくなるなどの場合もあり、一つに薬剤の効果に絞り込むことがきわめて困難であることがあげられる。また全体の症例数が十分であっても各薬剤毎での解析ではサンプルサイズは十分ではなく、検出力を満たすことができなかった点にある。今後としては比較的薬剤の影響が限定できやすい副作用の発症について検討を行うことや、SNPをもちいた解析ではなく次世代シークエンサーを用いたエキソーム解析や代謝経路に関連する遺伝子の網羅的な解析などを行う。また家系解析などにて同一家系内で薬効や副作用の発症に差がないかなどを検討していく。
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