研究課題/領域番号 |
25860541
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小泉 洋平 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師(病院教員) (60596815)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝腫瘍硬度 / Elastic ratio / malignant potential |
研究概要 |
超音波を用いた臓器硬度診断装置であるReal-time tissue elastography(以下RTE)を用いてC型肝炎患者において肝硬度値を測定し、肝硬変診断方法を確立した。本研究は、この手法を用いて肝腫瘍を有するC型肝炎患者を対象に腫瘍肝硬度を測定し、その有用性を明らかにする事を目的としている。 2014年4月までに50例を対象に肝腫瘍硬度を測定した。平均腫瘍径は31.4±22.3 mm。腫瘍硬度値(Elastic ratio)の測定値に影響を及ぼす因子(組織学的分化度、肝腫瘍組織のN/C比、脂肪化、胆汁産生、細胞密度、線維性隔壁、線維増生、脈管浸潤、腫瘍内への流入血流、腫瘍径、腫瘍マーカー)について検討を行った結果、腫瘍内の線維増生がElastic ratioの測定値に有意な影響を及ぼす因子であった(p=0.044)。良性結節および高分化型肝細胞癌(A群)と中分化型および低分化型肝細胞癌(B群)のElastic ratioを比較するとB群は有意にElastic ratioが高かった(P=0.040)。他の悪性腫瘍でRTEを用いた腫瘍硬度測定に関与するとされている、脈管浸潤の有無や細胞密度は、有意な因子として検出されなかった。腫瘍硬度値と無再発生存期間の間には、相関がみられる傾向にあったが(r2=0.47, P=0.089)、腫瘍径や腫瘍マーカーといった他の因子とは相関がみられなかった。 RTEを用いた肝腫瘍硬度測定には、組織学的分化度と腫瘍内の線維増生の有無が影響を及ぼす因子であり、組織学的分化度の診断にElastic ratioが有用であった。腫瘍硬度値が増加すると予後は不良になり、肝腫瘍のmalignant potentialを反映していることが示唆された。今後、症例数を追加し、論文化する予定である。また、この研究成果を国内外の学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な目的は、1) 肝腫瘍硬度を測定し、腫瘍硬度に影響を与える組織学的因子を解明する。2) 肝腫瘍硬度と無再発生存率の関連性を明らかにする。3) 肝腫瘍硬度と肝細胞癌治療奏効率との相関性の有無を明らかにする。の3点である。 目的1)については、2014年4月までに50例を対象に肝腫瘍硬度を測定し、Elastic ratioの測定値に有意な影響を及ぼす因子が腫瘍内の線維増生であることを明らかにした。目的2)については、腫瘍硬度値と無再発生存期間の間には、相関がみられる傾向にあったが(r2=0.47, P=0.089)、腫瘍径や腫瘍マーカーといった他の因子とは相関がみられなかったため、RTEが無再発生存期間を反映する指標となる可能性があることを確認した。目的3)については、肝細胞癌治療後の経過を追って確認途中の段階であり、今後データを集積し、検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究立案時には、200例を対象に腫瘍硬度測定を行う方針であったが、現時点で50例の測定にとどまっており、今後も症例の蓄積が必要である。症例数の確保には愛媛大学医学部付属病院を中心とした肝疾患・肝炎の診療、情報交換のためのネットワーク組織(愛媛肝疾患・肝炎ネットワーク, Ehime Kanshikkan-Kannenn Network: EKEN net)を構築している。このネットワークを通じて、対象患者を紹介して貰う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究はH25年から26年の2年間に渡って行う研究であり、データを集積途中の段階である。データ解析・記録用の機器を購入予定であったが、データ集積が終了する目途が立った時点で購入する方針としたため、次年度使用額が生じた。 愛媛大学医学部付属病院を中心とした肝疾患・肝炎の診療、情報交換のためのネットワーク組織(愛媛肝疾患・肝炎ネットワーク, Ehime Kanshikkan-Kannenn Network: EKEN net)をを通じて、対象患者を紹介して貰い、データ集積を進め、データ解析・記録用の機器を購入し、論文化を進める
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