近年超音波やMRIを用いた硬度診断の報告が多く見られる。著者らはreal time tissue elastography (RTE)により肝硬度診断を行って来た。本研究では肝腫瘍硬度にフォーカスし、我々が独自に考案したElastic ratioを用いてを評価し、肝細胞癌悪性度診断への有用性を明らかにすることを目的とした。 【対象と方法】Elastic ratioを測定して、肝切除を行った肝細胞癌24結節を対象とした。(検討項目:1) 中分化型肝癌を診断するためのElastic ratioのカットオフ値をROC解析にて算出し値に寄与する因子を解析した。(検討項目:2) 腫瘍硬度と無再発生存期間、全生存期間の関連を検討した。(検討項目:3) 全症例中、NX-PVKAを測定した12症例を対象に、Elastic ratioの測定値に影響する因子、NX-PVKA値に影響する因子について検討した。 【結果】(検討項目:1) 中分化型肝細胞癌診断のためのカットオフ値は5.4 (AUC = 0.905、感度78.9%、特異度 100%)であり、中分化型肝細胞癌は高分化型肝細胞癌よりも有意にElastic ratio値が高かった(P=0.006)。線維性隔壁の有無、門脈浸潤の有無がElastic ratio > 5.4に有意に寄与する因子であった。(検討項目:2) Elastic ratioが5.4以上の群(n=12)と5.4未満の群(n=12)では、Elastic ratioが5.4未満の群の無再発生存期間が393±154日と、5.4以上の群(161±54.2日)と比較して有意に延長した。同様に全生存期間もElastic ratioが5.4未満の群が1493 ±90.4日と、5.4以上の群(1126 ± 156.4日)と比較して有意に延長した。(検討項目:3) NX-PVKA (P=0.349)とNX-PVKA-R (P=0.316)は、ともにElastic ratioの測定に影響しない因子であった。 【結語】RTEを用いたElastic ratioにより、肝硬度および肝腫瘍硬度の評価が可能である。肝細胞癌のElastic ratioは、肝細胞癌組織型、肝腫瘍内の線維化を反映し、肝腫瘍硬度値が高い症例は、無再発生存期間が短縮した。
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