研究課題
1.高次クロマチン構造変化のメカニズムの解明肝炎・肝細胞癌の誘導因子であるLTβの発現制御にはCTCFやその他遺伝子発現制御に関わるタンパク質を介したDNAの立体構造、すなはち高次のエピゲノム構造が重要であることを明らかにしてきた。このCTCFの制御にはリン酸化、アセチル化、ポリADPリボシル(PAR)化など翻訳後修飾が関与する可能性が指摘されている。我々は、これらの共通の制御シグナルであり、かつ炎症シグナルの代表的転写因子であるNF-κBに着目して、遺伝子発現および高次構造の変化について解析した。その結果、肝癌細胞株ではNF-κBのシグナルによりCTCFに翻訳後修飾が加わり、高次エピゲノムが変化しLTβ発現が誘導されることを見出した。またNF-κBシグナルが恒常的に活性化している肝癌細胞株では、LTβ発現に特異的な高次クロマチン構造が持続することを明らかにし、NF-κBの恒常的活性化により肝炎・肝発癌の原因となるLTβの持続的発現状態が生じることを示した。またNF-κB阻害薬を使用することでLTβの発現が抑制されることを見出し、NF-κB阻害薬をLTβ高発現群に対する個別化医療として用いる可能性を見出した。2.患者のLTβ発現のスクリーニング膜結合型サイトカインであるLTβは肝局所で発現しており、発現の確認は肝生検による組織検査など侵襲的な方法に依存していた。我々はより簡便かつ低侵襲な検出法として、患者血清よりexosomeを抽出し、exosome中のLTβを定量的に検出することに成功した。また肝癌患者の病理標本と対比させ、血清exosome中のLTβ発現は、腫瘍部分のLTβ発現と正の相関があり、肝癌組織中のLTβ発現を反映している可能性を見出した。さらに臨床データとの対比より、exosome中のLTβ高発現群は低発現群と比べ予後不良であることを明らかにした。このことは、肝癌患者の治療選択および予後予測に大変重要であり、LTβ高発現群に対する個別化医療の可能性が考えられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
The Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 11 ページ: 3054-3059
Cancer Medicine
巻: 8 ページ: 1214-1223