研究課題
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染による消化性潰瘍や胃癌発症の高危険群を同定することは非常に重要である。発症の原因として、様々な菌側の病原因子が関与していると考えられており、ピロリ菌の病原因子のなかではcagA遺伝子が最も研究されている。疫学的、分子生物学的にはcagAの遺伝子型が病原性と関連することが報告されているが、これらの研究は疫学またはCagA蛋白を全身に人為的に導入した遺伝子改変マウスの実験であり、実際それらのCagA蛋白を発現する菌が胃粘膜で同様の現象を引き起こすかについては不明瞭である。そこで本研究では種々のcagA遺伝子多型を持つピロリ菌を作製し、ピロリ菌のcagA以外の遺伝的背景を同じ状態にした上で培養細胞ならびに実験動物への感染実験を行う事で、より的確にcagA遺伝子の多型と病原性の関連性について評価することができると考えた。本研究では、昨年度に本講座で保管されているピロリ菌のDNA サンプルを用いてPCR を行い、cagA 遺伝子の有無について調べた。このうち、陽性であったサンプルについてcagA 遺伝子のシーケンス解析を行ったところ、cagAの遺伝子型がAB、ABC、ABD、ABCC、ABCCC、ABD、ABABCCなど種々の遺伝子多型を持つピロリ菌株を得ることができた。これらの菌を用いて、変異株を得るためにT7 Blue vector に cagA の上流及び下流領域とクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)を挿入したプラスミド(pTHP494/496::cat)を作製し、natural transformation 法でTN2 cagA欠損株(TN2⊿cagA)の作製にも成功したが、遺伝子相補株を作成することには、最後まで成功しなかった。そのため、まずは野生株、変異株を用いて、これらの株を胃がん細胞株と共培養し、発現する遺伝子に関して、マイクロアレイを用いた解析を行って、現在結果を解析中である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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