研究課題
本研究では、我々が以前に報告したNASH病態進展機序における腸管由来エンドトキシン(ET)に対する肝臓での過剰応答により誘導される炎症性サイトカインが肝内炎症を惹起するだけでなく、肝からの脂質排泄を障害することで肝内に遊離脂肪酸(FFA)の蓄積をきたし肝障害を進展させるという機序を解明することを目的としている。平成25年度には、微量ETであっても肝MTPが抑制されることで肝脂質代謝障害が惹起される可能性を示している。平成26年度には、(1)肝細胞特異的MTPノックアウトマウス(Alb-Cre+/MTPfl/flマウス)への高脂肪食長期投与(12週間)により、コントロールマウス(Alb-Cre-/MTPfl/flマウス)に比し著明に肝線維化が進行することを示した。また、同マウスでは肝内にFFAが有意に蓄積していた。(2)マクロファージ特異的レプチン受容体ノックアウトマウス(LysM-Cre+/Leprfl/flマウス)に対して、高脂肪食を12週間負荷した後、微量ETを投与すると、コントロールマウス(LysM-Cre-/Leprfl/flマウス)に比し、レプチン-STAT3経路の抑制により肝におけるET感受性が低下することで微量ETにより誘導される肝MTP発現の低下が抑制されるという結果であった。(3)ヒトNASH患者において血清及び肝組織中のFFAを測定したところ、NASH患者では非NASH患者よりも有意に上昇していた。これらの検討により、肝MTPの抑制が脂肪肝炎-線維化をきたすこと、またマクロファージにおけるレプチン-STAT3シグナルが微量ETに対する反応性を亢進させ、肝MTPを抑制することが示唆された。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
PLoS One
巻: 26;9(12) ページ: e115403
10.1186/s12876-015-0269-3.