研究課題
1.免疫組織化学染色(IHC)での臨床病理解析について膵癌症例61例を抽出し、その病理組織を用いて抗AR抗体と抗HB-EGF抗体でのIHCを施行。HB-EGF染色は非特異的染色が強く、陽性・陰性染色の判定が困難であったため、染色状態が良好なARを用いて臨床像と比較した。我々の大腸癌の検討によると、ARの染色は細胞質が陽性のものは核内も同様に陽性であったが、膵癌においては核内の染色率は2例(3 %)のみと極めて少なく、AR核移行の存在が十分に明らかにされなかった。また、細胞質におけるAR発現と予後の相関を見てみると、大腸癌と異なりAR発現群が非発現群よりも予後が良いという予想と逆転した結果であった。さらに膵癌細胞(Mia PaCa-2, PANC1)を用い、(1)蛍光免疫染色法にてARの核内シグナル確認 (2)キットを用いて核抽出しウエスタンブロットで核内発現の確認をしたが、いずれにおいてもARの核移行の存在が確認されなかった。以上より、ARの核移行は膵癌においては確認されず、抗癌剤耐性モデルの解析には意義が乏しい事が考えらえれた。抗癌剤耐性に関する検討は大腸癌のモデルで継続することとし、申請時の方針のごとく他の癌種について評価することとした。膵癌臨床検体を用いた他の解析として、バイオマーカーとして知られるp53とMDM2についてIHCでの評価と、今回新たにパラフィン標本を用いた一塩基多型(SNP)解析を研究協力者(大学院生)とともに行った。その結果、IHCの結果とSNP変異との相関は得られなかった一方、p53のSNP変異は膵癌のリスクファクターとして、MDM2のSNP変異は予後予測因子として有用であることが明らかとなり、パラフィン標本を用いたSNP解析の有用性について論文として発表した。(PLoS One. 2015 Mar 3;10(3))2.昨年度報告した新規ターゲットについて現在ノックダウン細胞を用いたプロテオミクス解析・RNAシークエンス解析から得られた結果を検証中であり、それらの裏付け実験中である。
3: やや遅れている
当初平成25年度分に予定していた膵癌検体を用いた検討を26年度に完了したため、昨年度からの持越しは完遂した。しかし、膵癌細胞・臨床標本を用いた解析において、メインターゲットであるAmphiregulinについてmRNAレベル・タンパクレベルでの発現は確認されたが、その核移行が確認できなかった。また、amphiregulinの発現と予後そのものの相関が仮説と相反する結果が出たため、膵癌以外の他の消化器癌で改めて解析をする必要が出た。これにより進行度に遅れが生じている。
1.膵癌以外の癌種でのARの発現について臨床検体を用いて再解析する。2.昨年度報告したように、大腸癌モデルにおいて新たな関与ターゲットが同定されており、そのノックダウン細胞株の樹立にも成功している。増殖能については昨年検証済みであり現在抗癌剤耐性について解析を続けている。また、同時にこのノックダウン細胞核を用いたプロテオミクス解析・RNAシークエンス解析から得られた結果をさらに検証中であり、それらの裏付け実験を進める。現在、この新規関与ターゲットをノックアウトしたマウスモデルを扱っているアメリカの研究室と共同研究を行っており、そのマウスを用いて自然発癌モデルとともに検証を進めることも検討している。
26年度メインに予定していた膵癌細胞を用いたAmphirgulin強制発現モデル樹立を行わなかったため。
研究計画に述べた通り、膵癌以外の消化器癌を用いた解析を行った上、膵癌で予定していたモデルの樹立を行う。また、動物実験モデルが計画してあるため、その実現を予定している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (1件)
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