研究実績の概要 |
本年度は昨年に引き続き、ConA惹起急性肝障害モデルを用いてマウス急性肝障害の病態への腸内細菌の関与を検討した。 A. アンピシリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、ネオマイシンの4種類の抗菌薬カクテルを21日間自由飲水する腸管除菌モデル、B.無菌マウスを用いたいずれの検討においても対照群と比較してConA惹起急性肝障害が抑制され肝障害病態に腸内細菌が関与することが示唆された。ConA投与後の経時的な腸内細菌の解析の結果、投与1日後の免疫応答期にはBacteroides属の増加、投与4-7日目の免疫寛容期にはLactobacillus属の増加が認められた。興味深いことに21日間の抗菌薬投与による腸管除菌後免疫寛容期に増加する腸内細菌叢の前投与を行った群において、非投与群と比較してConA肝障害が有意に抑制され、腸内細菌により肝臓内免疫応答が制御されている可能性が示唆された。
さらにマウス肝線維化病態への腸内細菌の関与を検討した。3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)経口投与による胆管障害を主病態とする肝線維化・肝硬変モデル、四塩化炭素腹腔内投与による肝障害を主病態とする肝線維化・肝硬変モデルいずれにおいても抗菌薬カクテル投与群において非投与群と比較して肝障害、および線維化の程度は軽度であった。現在DEN投与による肝細胞癌発がんモデル(48週間)を含めて検討を行っており、今後肝線維化、発癌に寄与する腸内細菌叢、および肝臓内免疫細胞との相互作用を明らかにする。
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