我々はクローン病自然発症マウスであるSAMP1/yitマウス(SAMP1)において、異常な炎症性免疫をコントロールする機能を持つTregの機能低下と腸管炎症の病勢に関与していることを報告してきた。Mucosal Immunol. 2012 Jul 11. doi: 10.1038/mi.当研究はIBDに対する新たな治療法としてTregを用いた細胞免疫療法の確立に寄与することを目的とし機能保全されたTregをSAMP1に移入することにより、腸炎の発症ならびに病勢への影響を検証した。細胞移入治療経過中は体重変化、内視鏡検査で評価し、実験後は小腸炎を病理組織学的評価、各種サイトカインの分析などから治療効果を多角的に検証した。 研究成果:当研究はSAMP1を用いた多くの研究報告、実績を有するCase Western Reserve University digestive Research Centerと共同で遂行した。結果として、移植したTregの移入では小腸炎の改善、過剰免疫の抑制に明らかな影響を与えることはできなかった。そこで、SAMP1マウスのTregの機能改善に注目し、実験を継続した。無菌SAMP1マウス(GF)と通常環境下SAMP1マウス(SPF)に腸炎を誘発させるDSS溶液を内服させるとGFマウスが明らかに症状増悪し体重減少する。この結果は、無菌状態ではTreg機能不全により、DSSによって誘発された腸炎による過剰な炎症性免疫を抑制できないことを示唆したのであった。そこで、GFマウスにSPFマウスの腸内細菌を移入したのちDSSを投与する実験を行った。 初めは急激に腸炎が進行するも6日後には体重減少や症状スコアが抑制されることがわかった。これは腸内細菌がGFマウスのTreg機能の回復に関わり、炎症性免疫を抑制できたことを示唆するものであり、UC患者へのFMT療法という臨床研究の発想に至った。これについては平成28年度基盤Cで採択され、引き続き研究を続けていく。
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