研究課題/領域番号 |
25860568
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
井上 潤 神戸薬科大学, 薬学部, 研究生 (50631561)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オートファジー / 炎症性腸疾患 / 感染性腸炎 |
研究概要 |
本研究は、炎症性腸疾患の原因遺伝子の候補のひとつであるオートファジーによる炎症制御機構の解明を目的としている。臓器特異的オートファジー欠損マウスを作製し、オートファジーによる腸管炎症制御機構を解析する。すでに作製している腸管特異的オートファジー欠損マウスを用いてマウス炎症性腸疾患モデルであるDSS腸炎を誘発させたが、体重変化や腸の長さおよび病理像などからコントロールマウスと比べ腸炎の程度に差はなかった。また同様にCre/loxPシステムによって作成した骨髄性細胞特異的オートファジー欠損マウスを用い、同様にDSS腸炎の誘発を行ったが、コントロールマウスと比べ腸炎の増悪は認められなかった。これらの結果より、化学物質誘発性の炎症性腸疾患モデルでは、その感受性にオートファジーは関与していない可能性が示唆された。しかし、骨髄性細胞特異的オートファジー欠損マウスから採取した腹腔内マクロファージをマウス感染性腸炎モデル細菌であるCitrobacter Rodentiumと共培養し、マクロファージが培養液中に分泌するIL-1β量がコントロールマウスのものに比べ上昇することを明らかにした。これまですでに、腸管特異的オートファジー欠損マウスではCitrobacter Rodentium感染が増悪することを明らかにしているが、骨髄性細胞のオートファジーもCitrobacter Rodentiumの感染を制御している可能性がある。現在、骨髄性細胞特異的オートファジー欠損マウスに対し、Citrobacter Rodentiumの感染実験を順次計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、当初の予定どおり腸管特異的オートファジー欠損マウスを用いた腸管炎症制御機構の解析を行った。また骨髄性細胞特異的オートファジー欠損マウスを作製し、腸管炎症病態における骨髄性細胞のオートファジーの関与を解析しうるシステムを確立した。これらのマウスを用いてオートファジーによる腸管の炎症制御機構の解析を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄性細胞特異的オートファジー欠損マウスより採取した腹腔内マクロファージを用い、感染性腸炎モデル細菌であるCitrobacter Rodentiumに対し炎症反応が亢進することを明らかにした。この結果は、骨髄性細胞のオートファジーがCitorobacter Rodentium感染をはじめとする細菌感染を制御している可能性を示唆する。 今後は当初の予定通りに、このマウスにCitrobacter Rodentiumを感染させ、骨髄性細胞のオートファジーによる腸管炎症制御機構を解析していく。また、このマウスから採取したマクロファージを用いて、細菌に対する貪食能および分解能などオートファジー欠損が与える影響をin vitroでも解析していく。 さらに、骨髄性細胞特異的オートファジー欠損がCitrobacter Rodentiumのような局所感染だけでなく、全身性の感染に対してもその感受性に影響を与えているかを解析する実験を追加する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に設備備品費としてあげていた吸光マイクロプレートリーダーは当研究室の配分研究費で購入した。また、年度末に購入予定の試薬類が,ロット確認の必要から次年度購入となった。さらに、次年度に行う実験の配分を増やしたために,試薬の購入をずらした。以上の理由から次年度使用額が生じた。 申請時の計画に沿って26年度も研究を進めていく。当初の予定通り、骨髄性細胞オートファジー欠損マウスを用いて、Citrobacter Rodentiumの感染をin vivo、in vitroで解析する。さらに、当初の計画に加え、骨髄性細胞特異的オートファジー欠損が全身性の感染に対してもその感受性に影響を与えているかを解析することを試みるために次年度の研究費を計上する。
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