研究概要 |
CGRP(calcitonin gene-related peptide)は、強力な血流増加作用とともに、骨髄細胞の誘導、炎症性サイトカインの抑制作用をもつ神経ペプチドある 。このような背景から、CGRPの投与がUCの新たな治療戦略となることが期待され、UCモデルを用いてCGRPの有効性とその作用メカニズムについて検討した。方法として正常ラットから末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、CGRP添加培 養後のサイトカインレベル(IL-1,IL-6,TNF-α)をRT-PCR法とELISAで測定した。DS S大腸炎ラットにCGRPを経静脈的に投与し、臨床スコア、内視鏡スコア、サイトカイン発現(IL-1,IL-6,TNF-α)、CGRP受容体発現(RAMP1,CRLR)、骨髄でのCFU-GMの誘導、末梢血での血管内皮前駆細胞(EPC)の動員、腸粘膜血流量の変化を検討した。ヒトUC患者および健常人からPBMCを分離し、CGRP発現をRT-PCR法で検討した。結果としてin vitroでCGRPを添加すると、PBMCの炎症性サイトカイン発現、産生は濃度依存的に抑制された。DSS大腸炎モデルの腸粘膜ではCGRP発現量は低下していた。CGRPを経静脈的投与すると、臨床スコアの改善、内視鏡スコアの改善、IL-1,IL-6,TNF-α発現の低下、RAMP1,CRLR発現の増加、骨髄でのCFU-GMの増加、末梢血でのEPCの増加、腸粘膜血流量の増加がみられた 。ヒトUC患者では、健常人に比べてPBMCでのCGRP発現が低下していた。結論としてCGRPがUCの病態形成に関与していることが示唆された。CGRP投与は、腸粘膜血流の増加・骨髄細胞の誘導による組織修復効果と、炎症性サイトカイン産生抑制による抗炎 症効果の両面からの腸炎改善効果を発揮し、UCの新たな治療戦略となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、正常ラットから末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、CGRP添加培養後のサイトカインレベル(IL-1,IL-6,TNF-α)をRT-PCR法とELISAで測定した。DSS大腸炎ラットにCGRPを7日間経静脈的に投与し、臨床スコア、内視鏡スコア、サイト カイン発現(IL-1,IL-6,TNF-α)、CGRP受容体発現(RAMP1,CRLR)、骨髄でのCFU-GMの誘 導、末梢血での血管内皮前駆細胞(EPC)の動員、腸粘膜血流量の変化を検討した。ヒトUC患者および健常人からPBMCを分離し、CGRP発現をRT-PCR法で検討した。急性モデルでの検討が順調に解析でき、in vitroでの解析でも良好な結果が得られたため、バイオマーカーとしての臨床応用も考えヒトでの検討に移行した。
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