研究課題
(1)<血球細胞と肝細胞を用いたTLR4経路のin vitro解析>昨年までに実施したリアルタイムPCRやマルチプレックスアレイで得られたデータを元にHBV感染による肝線維化進展機序の確認を行った。その中で、IL-6やTGF-βといった炎症性サイトカインと上昇が認められた。また、PDGF-C上昇を確認し、肝線維化への関与が認められた。(2)<キメラマウスにおけるTLR4経路のin vivo解析>in vitro解析で得られた結果を確認するために、HBV感染キメラマウスの準備を進めた。キメラマウスへHBV感染をさせて感染が安定するところまで維持した。そこに、IL-6、TGF-β、PDGF-CなどのsiRNAを投与することで飼育を維持した。この間にHBVウイルス量の減少を認めることはなかった。以前の我々の検討から、線維化の形成までに6ヶ月程度の飼育が必要なことがわかっているため、現在も飼育を維持しており、最大で6ヶ月の飼育を予定している。剖検時には、肝臓の病理染色や免疫染色を行う。併せて、RNAの抽出を行い、遺伝子レベルでの変動を確認する。(3)<TLR4を活性化させるリガンドの探索>過去の報告に従って、過酸化脂質がTLR4のリガンドとなっている可能性を元に検討したが、in vitroとin vivoにおいてHBV感染下では過酸化脂質の関連を見出すことは出来なかった。そこで、in vitro系で得られた培養上清とキメラマウスの感染後の肝臓と感染血清をTOF-MS/MS分析にかけて関連する分子の探索を行った。現在解析を進めており、来年度に候補分子について検討を行い、真に関連のあるものを同定する。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従って概ね順調に進行している。長期間に渡るマウスの飼育やディスカバリーを目的とした網羅的解析を実施したために、本年度はいくつかの実験を来年度に持ち越すことになったが、これも計画の範囲内である。来年度初旬に本年度の実験の評価を確定させ、最終年度の計画を進めることができる。
(1)<血球細胞と肝細胞を用いたTLR4経路のin vitro解析>引き続き、2年目に利用したin vitroの共培養系で基礎データの収集を図る。特に、PDGF-Cについては、新しい分子であるため、その機能の詳細を検討する。また、これまでに候補に上がった関連遺伝子やサイトカインに対して、HBV感染の有無での影響をLoss of functionとGain of function実験を行なって、その関連を評価する。(2)<キメラマウスにおけるTLR4経路のin vivo解析>2年目で開始したマウスの解析を進める。必要であれば追加実験を行い、(1)で得られた候補遺伝子の阻害を抗体やsiRNAを追加する。(3)<TLR4を活性化させるリガンドの探索>抗TLR4抗体での試験サンプルを用いて、キメラマウス肝臓において、6ヶ月後に剖検と病理学的解析を実施する。MS解析で得られた肝線維化の関連分子についての抗体等をつかった中和実験で抗線維化作用が得られるかを検討する。(4)<論文化の準備>これまでのデータをまとめることで、論文化の準備をすすめる。得られた研究成果で特許を取得できる可能性があるものがあればその準備も行う(国立国際医療研究センター知財開発室と共同して実施)。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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