研究課題
膵臓癌は毎年新たに約23,000人が診断されるが、診断時には進行期であることが多く、化学療法、放射線治療に抵抗性を示すため極めて予後不良の悪性腫瘍であり、近年増加傾向にある事からも、膵臓癌に対する新規治療法の開発が早急に望まれている。本研究の目的は研究代表者らが確立した細胞表面膜タンパク質に対する定量的プロテオミクス手法を用いて膵臓癌の抗体医薬品開発の標的となる癌抗原を同定し、腫瘍の増殖との関係の解明及び癌抗原に対するモノクローナル抗体の開発と動物モデルでの抗腫瘍効果を証明することとした。平成24年度から25年度にかけて、研究代表者は定量的プロテオーム解析を行う事で正常ヒト膵臓皮細胞と比較して膵臓癌細胞株にて高発現する膜タンパク質を探索し、767種類のタンパク質を同定した。この内、262種類の細胞表面膜タンパク質が含まれていた。同定されたタンパク質の中には正常ヒト膵臓上皮細胞と比較してAsPC1、BxPC3などに高発現する分子が認められた。この分子が癌細胞表面に発現していることをFACS解析によっても確認した。免疫組織化学染色法により、膵臓癌組織中に本癌抗原が高発現することも明らかにした。最終年度において、本癌抗原に対するマウスモノクローナル抗体を18クローン取得することに成功した。開発した抗体が標的とする癌抗原と結合することで細胞内へ取り込まれる活性を示す事が確認出来たため、チューブリン阻害活性を有する抗癌剤結合2次抗体を用いたin vitro ADC(antibody-drug conjugate)アッセイを行った結果、IC50 値が癌抗原陽性細胞に対して1nM以下を示したが、癌抗原陰性細胞には抗腫瘍効果を発揮せず、標的抗原の発現に特異性を示した強い抗腫瘍効果を確認することに成功した。引き続き、膵臓癌の抗体医薬として治療への応用を目指した開発を進めている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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