研究実績の概要 |
PBC肝内におけるTL1AとそのレセプターであるDR3の陽性細胞を明らかにするとともに、PBC病態形成に関与するTL1A-DR3経路の解析をおこなった。PBC肝浸潤リンパ球におけるTL1A陽性細胞は主に単球・マクロファージであり、傷害胆管の周囲に多く認められた。肝内TL1A遺伝子発現は、PBCの疾患活動性が高い群は低い群と比較し有意に高値であった。PBC肝内におけるDR3陽性細胞は、主に胆管細胞、浸潤単核球であった。浸潤単核球の主なDR3陽性細胞はT細胞であり、PBCの病態形成に関与が指摘されているIL-17産生T細胞にもDR3発現が認められた。In vitroの解析により、DR3は、ヒト末梢血単核球では細胞表面と細胞内に発現するのに対し、胆管細胞では細胞内にしか発現が認められなかった。TL1Aは、培養胆管細胞からのケモカイン・サイトカイン産生や抗Fas抗体,TRAIL,可溶型CD40リガンドによる培養胆管細胞のアポトーシス誘導に顕著な影響を及ぼさなかった。一方、TL1Aは既報の如くナイーブCD4陽性T細胞からIL-17産生T細胞の分化を促進した。以上の結果から、単球、マクロファージ、胆管上皮細胞から産生されるTL1Aは、胆管上皮細胞のサイトカイン・ケモカイン産生、アポトーシス誘導を介し直接的に胆管障害に関与するよりも、Tリンパ球を介しPBCの疾患活動性に関与する可能性が示唆された。
日本人のPBCとクローン病に共通する疾患感受性遺伝子としてTNFSF15,CXCR5,ICOSLG,IL12B,STAT4を同定した。両疾患の発症に対しTNFSF15,CXCR5,ICOLGのリスクアリルは同一であったが、IL12B,STAT4のリスクアリルは異なっていたことから、これらの遺伝子の多型は両疾患の病態形成の共通性と異質性に関与している可能性が考えられた。
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